地元・宮崎で所有数を拡大

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コロナ下のリモート勤務を生かし 宮崎で所有物件数を129戸まで拡大

 

 外資系IT企業に勤める新地俊一オーナー(東京都中央区)の不動産経営は「節税のための区分マンション所有」という形で始まった。収入が増えたタイミングで、会社の同僚から勧められたことがきっかけだという。

 そして、2016年に不動産投資家である白井知宏氏の「元外資系サラリーマンの家賃年収『1億円』構築術」という本の出版記念パーティーに参加したことで、不動産経営に対する認識を改めた。「節税」ではなく「投資」として認識し始めたのだ。

新地俊一オーナー(東京都中央区)

 「それまでは、収入を上げるためには会社でがむしゃらに働かなければならないと思っていました。しかし、不動産を事業として家賃収入を得ることができるのだと気付いたのです」(新地オーナー)

 その後、一棟ものの物件の購入のために動き出した。しかし、まずは区分所有の物件を売却する必要があった。区分所有が与信を損なう状況になっていて、なかなか融資を得られなかったのだという。何とか売却にこぎ着け、まずは17年、個人で都内に22戸のマンション1棟を1億3400万円で購入した。ただ、オーバーローンでの購入で手残りが少なかった上、サブリース契約で年々保証金額が下がっていくことに不安を感じていた。そこで自ら空室対策を学び、サブリース契約を解除。管理会社を変更して満室を実現した。

 この間も「物件を買いたい」という思いはどんどん強くなっていったが、東京にはライバルが多く、休日にしか物件を見に行けないためになかなか良い物件に巡り合えなかったという。

コロナ下で移住した宮崎 都内会社員が優良属性に

 そんな中、新型コロナウイルスが流行し始め、新地オーナーの勤める会社ではフルリモート勤務が可能になった。心機一転、出身地である宮崎県に移住した背景には「宮崎で物件を買おう」という思いがあった。移住後、すぐに法人を設立し、それ以降の物件は法人として購入している。

 東京では「平凡だった」という新地オーナーの会社員としての属性が、宮崎では高収入の優良属性となり、融資も受けやすいことがわかった。

 プロフィルシートを作って銀行や仲介会社を回った。営業職としての経験を生かして、接触回数を増やし、信頼をつくり上げていったのだ。そのかいあって22年5月、宮崎で最初の物件を取得した。

▲水回りも改修し清潔な印象になっている

▲家具を設置し、ホームステージングをほどこした

 勢いそのままに、現在では6棟129戸を所有し、実家である戸建て1戸を含めて経営している。利回りはリフォーム費用を入れて10~14%ほどだ。

築古マンションをリノベ 商品化した実績でさらに購入

 新地オーナーが宮崎で購入したのは、築23~38年の古いRC造の物件が中心だ。キャッシュフローを重視し、融資を長くとれる物件を選んでいる。また車社会の宮崎で商品化できる物件なのかどうか、駐車場や立地の条件を重視した。

 空室が多くても、そうした条件が良ければ購入していき、空室からリフォームを進めた。建物全体に手を入れるのではなく、内見時によく見られるポスト周りや室内を中心に改装。客付けしやすい物件にすることを意識した。

 また大規模なリノベーションを施した部屋を紹介する資料を作り、次回の物件購入時に実績として銀行や仲介会社に見せ、さらに融資を受ける材料にしていった。

 「不動産賃貸事業は、銀行の融資ありきのビジネスです。各銀行、支店によって方針などが変わるので、自分のプロフィルシートをしっかり作成し、銀行がどういった物件に融資を出しやすいのか等を確認のうえ、その情報を基に仲介会社に物件を探してもらいます。以前はその順序を逆でやっていて、なかなかうまく進まないことが多かったのです。経験を生かして今はその順番で取り組んでいます」(新地オーナー)

 状況を分析し、信頼関係を築く新地オーナーの戦略は、売主に対しても発揮されている。売却先を決めかねていた90歳代の前オーナーに手紙を書き、売却を決めてもらったこともある。その際は「Chat(チャット)GPT」を利用して自分の考えをまとめ、手書きの手紙に書き直して熱意を伝えた。仲介会社からは「泣いて喜んでくれた」と教えてもらったという。

 23年9月、定期的な出社が必要となり東京に戻ることになった。法人の住所は宮崎に残し、定期的に宮崎の管理会社、仲介会社、銀行などに顔を出して信頼関係を維持している。今後も1年に1棟以上の購入を目指し、賃貸経営を拡大していく予定だ。

(2025年 10月号掲載)

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