<<経営に相乗効果を与える不動産>>
本業とのシナジーを生み出す 価値の高い不動産運用を提案
不動産のアセットマネジメント(AM)を行うプロフィッツ(東京都千代田区)は、機関投資家や個人オーナーらから約1130億円の運用を受託。ファンドを組成したり、投資用不動産の購入・運用・売却を行ったりする。受託の内訳は、機関投資家が710億円、企業や個人オーナーが420億円となる。主に不動産以外を主業とする顧客向けに、不動産運用のコンサルティング事業も行う。機関投資家向けのファンド事業の規模のほうが大きいものの、同社は企業や個人オーナーを今後の重要な顧客だと捉えている。企業の不動産投資・運用の意義は、本業との相乗効果だと考えるからだ。

▲田中慎一郎社長(中央)と、プライベートアセットマネジメント部ディレクターの岩田友則氏(左)、マーケティング・R&D部 マネージャーの鴫原香織氏(右)
強みはずっと続く付き合い
同社のノンプロ向け不動産運用サービス事業では、本業が不動産事業以外の企業を主な顧客としている。物件・用地の提案や売買にとどまらず、企業側の状況や事情をくみ取り、運用手法やファンドの組成を含めてその顧客に最適な資産形成方法を提案。実現に至るまで伴走・サポートすることが強みだ。本社ビルの取得から保育園といった事業用物件の取得・運営、ペット可物件などでの差別化やブランディング、資産運用のアドバイスまで幅広くカバーする。
現在は11社の案件が進行中、これまでに累計18社が同社のサービスを利用している。契約後は顧客がコンサルフィーを支払う仕組みで、不動産に関するあらゆる相談を行うことができる。顧客からすると固定費になるため、売買時に仲介手数料を支払うよりも抵抗感がありそうだが、資産運用にプロのアドバイスが必要だと考える経営者からの評価は高い。「プロジェクト単位で受注したものを除けば、継続率は100%です。毎月コンサルフィーがかかるビジネスは日本の不動産業界において一般的ではないですが、当社は資産運用へのアドバイス、とりわけ不動産が企業に与える相乗効果を見据えている点が評価されています」と田中慎一郎社長は話す。
事業者や大地主こそ不動産投資
日本では、ただ漫然と資産を持っているだけで何もしないでいると、代を重ねるごとに相続税がかかって資産が減ってしまい事業が維持できなくなる。
「それなのに財産や事業を守ることを、資産に対して何もしないことだと勘違いする地主や経営者が多くいます。資産が潤沢にあるうちに、不動産を事業化して収益を上げられるようにしなければ、事業が持続不可能になってしまいます」と田中社長は警鐘を鳴らす。
以前、香港系投資家と設立した不動産投資会社で代表をしていた際、田中社長は財を守るため積極的に投資をする海外の富裕層や経営者の姿を多く見た。
「これが本来の『守り』なのだと思います。企業の経営にとって、不動産経営は必要不可欠なものなのです。メリットは収益の多角化、レバレッジが使えるなど、事業承継や相続での強みとしてよく挙げられているとおりです」(田中社長)
事業化して最大の利益を出す
だが、不動産はただ取得すればいいわけではない。あくまで事業化してこそ光るものだ。「取得するだけで資産ポートフォリオが改善」「不労所得」「手がかからない」そんな認識で取得・運用していてはほとんど意味がない。自社にとって価値のある不動産を所有すること、価値を最大化することが企業の不動産投資の要と言える。

▲「ポルシェセンター足立」の出店をサポート。事業収支分析、リース契約など、多岐に渡る役割を担った
「日本の不動産を『事業化』したい」と田中社長は言う。例えば修繕費。PL(損益計算書)のキャッシュに着目すれば出費に見えるだろう。しかし、BS(賃借対照表)で見て価値が上がると捉えれば、それは事業の成長ということになる。この意識変革こそ今後企業に求められるものだ。不動産運用は資金も時間もかかるからこそ事業として考える必要がある。
社会的意義のある楽しい不動産
不動産事業を行わない企業にとって不動産の事業化は敷居が高そうだが、まずは「『なぜその不動産を買うのか』『その不動産を使って何がしたいのか』を言語化するといい」と田中社長は話す。それが自社の事業内容や財務状況といった無形財産を生かす発想につながる。つまり、自社の本業と不動産が生み出す相乗効果に目が向くのだ。
例えば、地方の中核企業である自社の存在感から、ランドマーク的な本社ビルを取得した企業がある。ほかにも、本社を改修して一部を賃貸とすることでエリアに良質な住居を増やす、社会貢献のために保育園などを造るなど、同社は各企業の特性に合わせて資産運用を提案・実現してきたという。本業との相乗効果により、ほかがまねできない付加価値を与えることが可能となる。それは資産や企業の価値にそのまま返ってくる。

▲ジャパネットホールディングスのオフィス。情報収集から交渉・購入までサポート
「私たちが介入する案件では、物件ありきで入居者を探すのではなく、やりたいことをベースにしてどんな不動産にすればいいだろうと考えます。自社の事業を大きく伸ばしたり、社会的意義のある不動産に関わったりすることができるのはとても楽しい。楽しく、まっとうに事業を行って収益も上げていきたいと思っています」(田中社長)
リーマン・ショックで得た思い
収益性を追求するなら、機関投資家だけと取引するほうが効率がいいだろう。しかし、同社がノンプロの顧客にこだわるのは理由がある。
かつてのリーマン・ショックの際、不動産業界に身を置いていた田中社長は、海外の投資家が資金を引き揚げて逃げてしまう様子を目の当たりにした。「それ自体は悪いことだとは思いません。自分が同じ立場でもそうしました」(田中社長)。そして、その時に不動産を取得する体力があったのが、資本力のある企業や地主だった。
彼らを顧客とし、不動産をきちんと経営する手伝いをすることで「不動産を通じていいことを実現しながら収益をつくり上げたい」というのが田中社長の願いだ。
(2025年10月号掲載)