<<オルタナティブな投資手法>>
熟成期間に応じて価値が上がる
ウイスキーカスク(樽)への投資
熟成が進むほど価格が上がっていくウイスキー。この特徴を利用して、ウイスキーを熟成する「樽(カスク)」に投資するのがウイスキーカスク投資だ。2016年から一般投資家に門戸が開かれた新しい投資商品で、単に投資するだけでなくウイスキーの文化に触れる楽しみもあるという。
クレア・ライフ・パートナーズ(東京都新宿区)
工藤将太郎社長
- ▲毎年の値上がりが期待できるカスク投資
時間に比例して価値が高まる
ラグジュアリー投資といえば、従来は収集を楽しみながら価値の上昇を見込めるクラシックカーやアンティークコインへの投資が主流だった。そうした中、近年注目されているのがウイスキーカスク投資(以下、カスク投資)だ。ウイスキーの樽に投資する方法で、ウイスキーのブランドや熟成期間によって価値が変わってくる。
「ウイスキーは『時間』が価格に影響します。つまり熟成が進むほど価値が上がるということです」と話すのは、ウイスキーカスク投資商品を先駆的に扱っているクレア・ライフ・パートナーズ(東京都新宿区)の工藤将太郎社長だ。ウイスキーカスクの価格上昇が有価証券市場の値動きとは連動していないという意味で、分散投資として有望な選択肢になるという。
「時間に比例するということは、どれだけ価値が上がるのか予想が立てやすいともいえます」(工藤社長)
そのため年数に応じた上昇を見込み、借入金の繰り上げ返済や一括返済を行いたい時期に売却。その売却益を返済に充てようと考える不動産オーナーもいるという。
人気の価格帯は1樽100万~150万円だが、40万円から購入することが可能だ。

▲投資したウイスキーをオリジナルラベルで販売することも可能
ワインに比べ管理しやすい
カスク投資の仕組みはこうだ。
①クレア・ライフ・パートナーズが価格帯などを考慮し、ブランドや生産地を選び仕入れを行う。
②クレア・ライフ・パートナーズがオーナーと売買を行う。現地のウイスキー樽の管理はクレア・ライフ・パートナーズがサポートする形でオーナーが倉庫での管理を依頼。
③オーナーが売却を決定した際には、同社が金額を考慮しながら売却先やタイミングを提案。売却益がオーナーに支払われる。

酒類への投資にはワイン投資もある。ワインは瓶に詰められた後も酸化が進むため、購入後の管理が難しく、ブドウの生産にも大きく影響を受ける。それゆえ毎年安定した値上がりを期待するのは難しい。対して、ウイスキーは環境に大きく影響されないことから、管理がしやすい。そのため、投資商品としてのリスクが低いという。
「飲むのはワイン派だが投資するのはウイスキーという顧客もいます」(工藤社長)
管理面でも、カスク投資にはメリットがある。イギリスの歳入庁が監視している「保税倉庫」で管理され、定期的に免許事業者らによるチェックが入るため基本的にオーナーが直接何かする必要がない。
ただし、もちろんデメリットもある。
「外貨建てのため為替リスクがあるのは一般的な投資と同じです。また熟成期間を長く取り、価格が1億円など高価になると売却先がすぐに決まらず、確定までに1年近く要する場合もあります」(工藤社長)
人生の楽しみが増す
不動産オーナーにとっては、相続税対策にもなるという。
動産商品であるウイスキーカスクの評価は、購入時の売買契約書を基に算定される。そのため、値上がり部分は含み益として課税されない。また不動産のように登記変更といった手間がかからないのもメリットだ。名義変更のみでコストもかからないことから、相続対策の一環としてカスク投資を考える不動産オーナーもいるという。
こうした相続上のメリットと同時に、何より生活を豊かにしてくれる良さがカスク投資にはあると工藤社長は話す。
「ウイスキーは日常にあるもの。カスク投資をすることで、普段飲んでいるウイスキーの見方が間違いなく変わるのです。当事者意識が高まるといいますか。造り方だったり、歴史だったりに興味を持つことで、教養が深まります」(工藤社長)
同社では現在、スコットランドへのウイスキーツアーを準備中だという。
「カスク投資でウイスキー樽を所有したことをきっかけに、実際現地へ旅行し、自分の樽のある蒸留所を訪れて、そのブランドのウイスキーを飲んでみることができます。個人の場合、投資は利回り追求を重要視するというよりはライフプランの実現が最優先事項だと考えています。人生をより良くする材料として、カスク投資という新たな手法を提案しています」(工藤社長)
▲同社ではスコットランドの蒸留所を訪問するツアーも企画している
(2025年12月号掲載)






