【連載】海外各都市の不動産投資:マルタ共和国:1月号

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マルタ共和国の不動産事情

地中海の貿易拠点として繁栄

 マルタ共和国は地中海の中央、五つの島から成る国です。イタリア・シチリア島の真南に位置し、アフリカ大陸も近い。その位置関係から、かつて地中海貿易の拠点として栄えました。

 古代より、カルタゴ、ローマ、アラブ、スペインなどの支配下に置かれた後、1800年から英国の保護国となり、公用語には英語が採用されました。その後、1974年に独立。2004年には欧州連合(EU)に加盟しました。通貨はユーロを採用し、国の主要産業は観光、金融、教育などです。

開発進み富裕層の移住増加

 マルタ共和国を構成する5島のうち、有人島は主島のマルタ島とゴゾ島、コミノ島の三つです。そのうち首都・バレッタがあるマルタ島は、東京23区の3分の1ほどの面積が高度に開発されており、のどかなリゾート島というよりは「都市国家」の様相を呈しています。

 マルタ国際空港からバレッタ、スリーマ地区を経て、島内で一番高層建築の多いセント・ジュリアンズまで、都市が途切れずに続きます。近代都市と歴史的な街並みが交錯し、どこからも海が見える、メリハリの利いた景観が特徴的です。

近代的な建築物と歴史的な街並みが共存するマルタ島

 島の人口は約50万人と少ないですが、年間を通じて温暖で過ごしやすい地中海性気候で、英語圏であることや教育に力を入れていることもあり、欧州や北米からの富裕層の移住が多いです。そのため不動産マーケットは成長を続けています。

指定住宅は外国人も複数所有可

 国土面積が小さく住宅資源が限られている同国では、海外からの投機的な不動産購入を防ぐため、不動産所有は原則として政府許可が必要であり、外国人の買える物件数は1件に限られます。その一方で、外国人投資家を戦略的に誘致するために特別指定区域(SDA) 制度が設けられています。SDAに指定された住宅なら、外国人でも複数戸の所有が認められるほか、売買も賃貸も制限がありません。

 SDAに該当する住宅は高級物件が多く、プール、フィットネスジム、駐車場、マリーナ、レストランなどのアメニティーが充実しており、投資対象や居住先として人気があります。価格帯は安いもので30万ユーロ(約5000万円)前後、高額なものは数百万ユーロ(数億円)以上になります。私自身が住みたい、買いたいと思う物件も数多くありました。

アジア太平洋大家の会
代表 鈴木 学

[PROFILE] 
海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。

(2026年 1月号掲載)

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