稼働率6割からの復活 2代目家主の経営手法

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稼働率6割からの復活 2代目家主の経営手法

群馬県桐生市は、同県内の高崎市や前橋市、太田市、伊勢崎市に次ぐ県内第5位の人口を誇る都市だ。しかしながら、1985年には13万人を超えていた総人口が、その後周辺2村を合併しながらも2025年10月末時点で10万人を切るなど、人口減少を課題に抱える。ところがこの場所で、入居率を逆に高めてきたマンションがある。家主の小島義隆オーナー(群馬県桐生市)に経営手法を聞いた。

小島義隆オーナー(群馬県桐生市)

桐生市築37年のマンション

 桐生市にマンションを所有する小島オーナー。1988年築、RC造4階建て20戸の「小島第一マンション」と、95年築、RC造7階建て21戸の「小島第二マンション」の2棟を運営する。この2棟は隣接しており、敷地内には合計約90台分の駐車場を備えている。

 現在の稼働率は約9割を維持。入居者はファミリー層が中心で、「妻の実家が桐生市内にある若夫婦」という入居パターンが多くなってきたという。かつては大手企業の社宅需要が主流だったが、今は地域に腰を落ち着けたい世帯を受け入れる役割を果たしている。

 一見すると、2棟41戸のマンションの9割稼働を維持する順調な賃貸経営に見える。しかし、それまでには、単月赤字を計上するような危機的状況を乗り越えた過去もあった。

 

転勤需要がなくなった

 小島家は江戸時代からこの土地に住む地主だ。戦後は長屋や貸家を複数所有し、地域の人々の住まいを支えてきたという。

 小島オーナーの父が50歳を迎えた80年代後半には、相続税対策の一環として小島第一マンションを建設した。総事業費は約1・5億円。続いて95年にも小島第二マンションを約3億円を投じて建設した。いずれも借り入れを伴う大型投資だった。

 建築当初は満室に近い状態を継続し順調だったというが、経営環境が大きく変わったのは2000年代に入ってからだった。その頃になると、桐生市内で賃貸マンションが乱立し、新築という優位性を持った競合が一気に増えたことで、小島マンションの需要が急速に減った。これに追い打ちをかけたのが、企業の動きだ。

 当時小島マンションの主な入居者は、大手保険会社など企業の転勤族や社宅利用者だった。この大事な客層が、当時の企業再編によって一斉に退去してしまったのだ。1996年の金融自由化により、銀行窓口での保険販売が解禁されたこともあり、保険会社の支店は減少。2000年代のリーマン・ショックもありこの流れは強まった。群馬県の場合、高崎市や前橋市などに支店を構え、桐生市はそこからの日帰り出張の範囲とされることが多かったという。

 そして、この影響が小島マンションの経営に大打撃を与えた。空室が一気に増え、稼働率は6割まで低下。家賃も新築時に設定していた12万〜13万円から7万〜8万円にまで下落。最も高いときと比べて、収入は50%以下になり、ローン返済が賃料収入を上回る状況に陥った。小島オーナーの父は貯蓄を取り崩して返済を続けたが、経営は破綻寸前に追い込まれた。

リスケと学びで危機を超える

 この危機的な状況で家業に参入したのが、長男で現オーナーの小島義隆氏だ。70年生まれの義隆氏は大学卒業後、金融機関に就職し全国各地を転勤。資金調達や融資の現場で経験を積んだ。

 2009年頃、家業を救うために桐生市へ戻り、小島マンションの経営に参画する。最初の仕事は銀行への返済条件の交渉だった。これまでの経験を基に金融機関へ交渉。リスケジュールを実現し、返済負担を軽減させたことが再建の第一歩となった。

 金融の知識はあったものの、その後、賃貸経営についても学ぶ必要があると感じた小島オーナー。そこで、体系的なノウハウを身に付けるため、(一財)日本不動産コミュニティー認定の大家検定(現不動産実務検定)を受講。建物維持や法制度、営業、マーケティングに至るまで幅広く学び、経営再建のための知識を身に付けた。

 そして、真っ先に力を入れたのが空室改善への取り組み、特に自社物件のPRだった。ホームページやブログ、SNSを駆使して物件をオーナーが直接PRし、仲介会社任せにせず募集した。桐生市という地方都市において、オーナー自らインターネットを活用して入居者募集を行ったのは当時はあまりみられなかった。

▲自社サイトでの募集にも力を入れた

地元に根付くための住まいに

 その効果はてきめんで、しかも思いがけない形で報われたという。これまでの転勤族から一転し、地元に腰を落ち着けたいファミリー層の入居希望の申し込みが増えたのだ。最近では、昔の入居者の子どもが大人になり、Uターンしてまた住んでくれたといううれしい話もあったという。

 「奥さんの実家が桐生市にあり、近くで子育てをしたいという若い夫婦に選ばれています。3LDKなど広めの間取りが子育て世帯に適しており、実家と程よい距離感で暮らせるマンション住まいとして喜んでくれる人もいます。小島マンションは、かつては転勤族のための住まいでしたが、今は“地元に根付くための住まい”に変わりました。入居者層が変化したことが、むしろ安定経営につながっています」(小島オーナー)

▲旧来の3DKの間取りを時代に合わせて2LDKにリノベーションした部屋もある

(2026年2月号掲載)

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