<<私が物件を買う条件>>
会社員時代に得た目利き力 インカム狙いで家賃年収4000万円
レバレッジを効かせて不動産を取得しているオーナーの多くが、金利上昇をリスクと捉えている。だが、中田昌孝オーナーはそうではない。高金利下では、資産価値も家賃も上がるためだという。中田オーナーに、物件を取得する際の条件や、経営を存続させるにあたっての考えを聞いた。
中田昌孝オーナー(岡山市)
中田オーナー(岡山市)は、個人と家族で経営する法人を合わせて16棟61戸と駐車場、軍用地を所有・経営している。年間家賃収入は4000万円ほどで、所有エリアは岡山市内だ。
近年は古くなった物件の建て替えや、軍用地への投資を進めている。多くの物件の中から古い順に少しずつ対応すれば、利益が急に減ることもなくリスクが低い。所有物件を段階的に組み換えていくことにより、継続的な経営を目指している。
一貫しているのは、自身の人生経験で得た金融の知識をフル活用した経営スタイル。それは、キャピタルゲインではなくインカムゲインを重視するというものだ。

▲07年に個人で新築した1棟目の鉄骨造アパート。当時は珍しかったインターネット無料の物件だ
高金利はウエルカム
リーマン・ショックを機に法人を設立した中田オーナー。会社員時代は、証券会社やファンドといったプロの投資の世界で生きてきた。そこで得た知識や経験、不動産の目利き力を自身の経営にも生かし、不動産賃貸事業の傍ら会社員時代の顧客に経営アドバイスをしていた時期もあった。
中田オーナーは、経営が持続可能な条件であるのか、必要な利益が出せるのかを数字で捉える。例えば、金利に対しては「高金利は問題ない、むしろポジティブに捉えている」と話す。高金利で返済に暗雲が立ち込めると不安になるとの声がちらほら聞こえてくる中、大多数の意見とは異なる考え方だろう。
中田オーナーは、高金利が望ましい理由として、高金利・インフレ下では物件価格が上がるため、資産価値の向上が期待できること、物価上昇で家賃も上がるので利回りに問題がないことの2点を上げている。実際に中田オーナーは金利上昇を前提に借り入れをしているため、今後もし金利が上がっても経営難に陥ることはないという。

▲17年に法人が新築した2棟目の鉄骨造アパート
元金均等で借り入れて高利回り物件を買う
返済方法は元金均等とするのがポリシーだ。元利均等よりも経費にできるお金は少なくなるが、元金の減りが早くなるため金利上昇に強く、デッドクロスを遅らせられるという。
「今、物価上昇率は約3・3%、名目金利との差である実質金利はマイナス1・6ほどです。これはお金の価値上昇よりも物価上昇のペースのほうが速いという状態。今はお金を借りて不動産を購入するのにいいタイミングです」と中田オーナーは見解を述べる。
だが、金利と物価の関係では不動産が「買い」であっても、考慮すべき要素はそれだけではない。建築費の高騰などで利回りは低い状態だ。金利と利回りの比較も大切だという。
「今、1%の低金利だとしても利回りが4%ならば、その差であるスプレッドは3しかありません。金利が3%で利回り10%であればスプレッドが7なので条件が随分違います。低利回りでは銀行もお金を貸したくないでしょう」(中田オーナー)
これまで利回りの高い物件を取得してきた。特にリーマン・ショックの後に購入した物件は高利回りの優良物件だという。不動産相場が大きく下落していたこともあり、精力的に買い進めていった。「例えば、4000万円の価値がある物件が2900万円で売りに出ており、割増退職金を頭金にローンで購入しました。いいタイミングで物件を増やすことができ、利回りも10~20%ほどと良好です」(中田オーナー)
入居が安定する住宅にこだわる
中田オーナーのもう一つのこだわりが「住宅」に特化した経営をすることだ。商業・オフィスビルより空室対策を講じやすく、不景気であっても家賃は下がりにくく安定した収入が見込めるからである。
リーマン・ショックが起きた2008年、中田オーナーは不動産ファンド会社で老人ホームのファンド運営を担当、実に85億円もの規模の不動産を運用していた。リーマン・ショックで勤め先は大打撃を受けたという。
「実はその1年ほど前から経済危機が起きるのではないかという嫌な予感はしていました。すでに、07年のパリバ・ショックの頃からファンドもお金を借りにくくなっていたのです。老人ホームの運営は良くても、売却益は出ない状態でした。事業は坂を転げ落ちるように悪化していきました」(中田オーナー)
この頃すでに中田オーナー自身は兼業家主として賃貸住宅を約10戸経営していた。会社員としての仕事は売却益を前提としていたため、勤め先の経営状態は火の車だったが、自身の賃貸経営は極めて順調だった。会社が破綻してオフィスビルからテナントが次々と退去する例はたくさん見たが、賃貸住宅の入居は安定している。同じ不動産投資でも、真逆の状況を比較できたことで「住宅はいい」と中田オーナーは確信したのだという。

▲07年には鉄骨造アパートを個人で購入している
承継を視野に入れ時代を読む
こうやって、インカムを重視して住宅を取得してきた中田オーナー。だが、最近、巷では、金利によらず頭金を求められるケースが出てきており、悩みの種になっている。土地があれば建物にはフルローンが組めた時代の後、13年からは金融緩和政策によってフルローンが組みやすい時期がやってきた。そして金融緩和を経た今、状況はかつてより悪くなったのだ。
「すでに土地を所有していてもフルローンが組めないのです。利回りが低い案件が増える中、銀行が満額を貸しにくいことはわかります。ですが、建て替え時は建物に対する借り入れですから、私は金利が高くともフルローンで借り入れたいのです。頭金を入れるとなると、そのお金の出どころはほかの物件の収益ということになります。1棟ごとに借り入れと収入と返済の関係が簡潔であってこそ、順次建て替えの戦略が取りやすいのです」(中田オーナー)
実際26年に完成する新築では、借り入れに際して頭金を3割ほど支払うことになった。「返済が終わった古い物件を解体して、新築を建てることを繰り返せば、事業は安定的に永続すると思っていました。しかし、それは全額借り入れが可能だったらということが前提です。建て替えのたびに頭金が発生するようでは、手持ちの資金が足りるとは言い切れない。今回は築52年という古い物件の建て替えだったので、借り入れ条件の状況が変わるのを待てる状態ではありませんでした。やむなく頭金を払ってでも建て替えるほかなかったのです。次の建て替えでも頭金が必要な状況かもしれません。今後はより綿密なシミュレーションが必要です」と中田オーナーは話す。
最近は軍用地にも投資している。原則的には住宅にこだわっているものの、住宅は手間がかかる。次世代に手間のかからない資産を承継させたいとの思いから、特例的に軍用地も購入しているのだ。「軍用地は利回りこそ1~2%ですが買ってからやることはありません。しかも、バブル崩壊やリーマン・ショックの時でも価値が上がり続けた超安定資産です。今後ももう一つの柱として買い増していきたいです」(中田オーナー)
資産の組み換えは事業承継を意識して行っている。「不動産事業は会社勤めと異なり定年がありません。まだまだ事業を拡大させたいという意欲はありますが、息子も30歳を超えました。将来の承継を見据えて、管理しやすい不動産への転換を行うフェーズでもあります」と中田オーナーは語る。
金利、物価、融資状況、次世代の考え、さまざまな背景を分析し、中田オーナーは今後も事業を成長させていく構えだ。
- ▲14年には個人でキャンプ瑞慶覧の軍用地を購入した
- ▲4棟目になる木造アパートは26年1月に入居開始
(2026年2月号掲載)






