テナント・土地活用展2025大阪セミナーレポート -自然共生型ビジネス

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発想の転換が救う耕作放棄地

フランチャイズビジネスの専門誌「ビジネスチャンス」が主催する「テナント・土地活用展」は、出店地を探す事業者と、遊休地の活用を模索する不動産オーナーをつなぐ展示会だ。2025年11月26日27日にインテックス大阪で開催された同展示会でマイファームの西辻一真社長がセミナー登壇。「農」を軸にした新たな土地活用の可能性をテーマにセミナーを行った。西辻社長が語った「耕作放棄地を体験農園に活用『自産自消』の自然共生型ビジネス」を紹介する。

マイファーム(京都市下京区)
西辻 一真 社長

全国で「体験」を提供 宿泊施設への活用も

 当セミナーでは、地主が持つ農地のさまざまな活用法をお伝えできればと思います。

 農地、とりわけ耕作放棄地の活用方法は、大きく分けて四つあります。

 一つ目は、高付加価値作物の栽培。これは薬草やマンゴーといった、儲かる作物を栽培することです。

 二つ目は、体験農園など多面的機能を価値に変える方法。作物を売るのではなく、畑を自由に使ってもらったり一緒に野菜づくりを楽しめる空間をつくります。

 三つ目は、放棄してしまう前に、作物の価格上昇を見据えてとにかく作物の栽培を続けること。例えば今、トマトなどは価格の暴騰が起きています。作物の価値が上がることを見据えて、我慢して続けることも一つの手だと思います。

 四つ目は、それらを組み合わせて法人化・事業化することです。一念発起して、先述した三つの方法を混ぜ合わせた形で農業法人を経営します。

 当社は、二つ目にあたる「体験農園」を軸に事業を展開しています。創業時は作物を栽培する農業法人として始まりました。最初に借りたのは、京都・宇治にある約300坪の農地です。耕作放棄地だったその場所を再生するには、土壌改良や排水整備が必要で、300坪でも約300万円かかります。しかし、この広さで米や野菜を作っても、年間の売上は20〜30万円程度にしかなりません。そこで発想を変えました。野菜を売るのではなく、「農業体験」を売ろうと考えたのです。300坪の畑で50組の利用者を集め、年間6万円で農業体験を提供すると、売上は300万円になります。これが、「体験農園マイファーム」の始まりです。

 私たちが狙ったのは単なるレジャーではなく、教育の市場でした。野菜の成長を通じて学ぶ食育の場として農地を活用する。この発想が、耕作放棄地の価値を大きく変えました。

 マイファームは現在、全国で約200カ所の体験農園・貸農園を運営しています。約120カ所の直営農園は、地主から農地を借りて当社が運営するモデルと、地主自身が運営し、当社が管理を請け負うモデルがあります。そのほか約80カ所では、フランチャイズや自治体と連携する指定管理モデルなど、多様な運営形式の農園があります。

 現在では、体験農園だけではなく自社で農地を借り上げて作物を栽培したり、耕作放棄地を違った形で活用しています。

 さまざまな作物を育てていますが、最も多く栽培しているのが薬草です。薬草は面白いもので、肥料や水はけが悪い場所のほうが薬効成分を多く含んだ薬草を育てられるのです。その成分は通常根っこに含まれますが、葉っぱからも薬効成分の香りがするものもあり、畑にいるだけでその香りに包まれます。薬草畑を使った、他では体験できない観光産業を作れないかと計画しています。

▲体験農園の様子、全国約200カ所で展開している

 そのほか農地の活用方法には、農地の上部空間にソーラーパネルを設置し、農業と発電事業が一体となったソーラーシェアリングという取り組みもあります。そういった場所でもマイファームは、サツマイモなど作物の栽培に対応しています。

 また、当社は茨城県笠間市でクラインガルテンを運営しています。クラインガルテンとは、宿泊できるコテージ付きの畑です。当社の場合は月に5万円で提供しています。手軽に暮らせる別荘のようなものです。そこでは50棟のクラインガルテンがあり、1棟ごとに100平米の畑が用意されています。行政上、開業のハードルや整備の難しさがありますが、地方創生に積極的な自治体が多いため、需要は高いです。

 このように単なる農業ではなく、エネルギー事業やレジャーなど複合的に活用できるのが農地の特徴と言えます。


多様化を見せる農地活用方法の可能性
教育や観光など複合的なビジネスモデルを展開

 

場所による活用法の違い 「農の日常化」を原点に

 では次に、農地の場所による活用法の違いを見ていきたいと思います。「都市部」「産地」「中山間地」、この三つに分けて考えていきます。

 都市部の場合、お勧めの活用方法は食農教育です。最近は幼稚園から高校まで総合学習の時間が増えていて、農業体験を取り入れる動きが活発です。地域の農家さんのところへ手伝いに行く授業があります。そういった形で、学校に農地を貸すのは一つの手です。実際、学校側からは「ぜひ貸してほしい」と言われることが多いです。

 次に、産地です。ここでは効率よく作物を栽培することができるので、利益を取れる作物を育てます。育てやすいサツマイモや価値の高いメロンなどがお勧めです。自分で作るのも良いですが、こうした場所では農地を借りたい農業法人が多くいるため、農家や法人に土地を貸すのもよくある手法です。

 最後に中山間地です。ここでは作物を育てるのではなく、楽しんでもらうことを中心に考えた方がいいです。なぜかというと、産地に比べ栽培効率が悪いからです。クラインガルテンや民泊を運営するなど、思い切って変わったことをやってみることがポイントです。

 整理すると、都市部は日帰りの農業体験。産地は農作物を売る。中山間地は宿泊体験や提供など、観光業に近づいていく。農地がどこにあるのか、その場所によってやるべきことは変わってきます。

 このように、農地には「教育」「観光」など、食べる以外の価値があります。ハーブ畑が観光地になることもありますし、薬草畑では深呼吸すること自体が新しい体験価値になるかもしれません。「農の日常化」というキーワードを耕作放棄地に当てはめて考えてみると、既成の概念にとらわれない新しい発想が生まれてくると思います。

 農業体験など付加価値のあるものを始めたいときは、当社のフランチャイズもありますし、何か新しいことを始めたいときは、一人で考えずぜひご相談ください。

(2026年3月号掲載)

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