不動産再生学講座:学生たちの挑戦が地方を元気に

賃貸経営不動産再生

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愛ある賃貸が起こしたイノベーション
愛ある賃貸経営から、新たなつながりの社会を創るひとたち

不動産業界において大きな変化が起こりつつある。そうした中、「不動産オーナー井戸端ミーティング」を主宰する𠮷原勝己オーナー(福岡市)が中心となり、貸し手と借り手、そして地域にとって「三方よし」となる、持続的でブランディングされた不動産経営を目指す勉強会を有志で開催している。

当連載では、建築・デザインを学ぶ学生たちと、全国から集まったプロフェッショナルが一緒に受講する場として、九州産業大学建築都市工学部で行った全14回の「不動産再生学」と題した寄附講座を紹介。今回は、合同会社よかごつ 代表社員 大堂良太氏の講演をレポートする。

合同会社よかごつ(福岡県糸島市)
代表社員 大堂 良太 氏

 

「寮が大好き。若者の背中を押したい」という原体験

僕は熊本県の出身です。大学から福岡に出て、その後10年ほど東京や名古屋で商社に勤めていました。もともと「40歳くらいになったら九州に戻って、地域に貢献できるような活動をしたり会社をつくったりしたい」と漠然と考えていたのですが、思いのほか早くやりたいことが見つかり、今から7年前、九州大学のキャンパスがある糸島市に家族で移り住みました。

僕が立ち上げた会社の名前は「合同会社よかごつ」。「よかごつ」とは熊本の方言で「好きなように、やりたいように」という意味があります。僕自身がやりたい若者の支援や、若い人がイキイキと活躍できる社会をつくりたいという思いを込めて、「イキイキ人を九州中に。日本中に。世界中に。宇宙中に。」という経営理念を掲げています。

なぜ「学生寮」をやりたかったのか。それは僕自身の原体験が大きく影響しています。僕は大学に通っていた6年間のうち、5年半を学生寮で過ごしました。そこは管理人がガチガチに管理するような寮ではなく、住んでいる学生が主体となって寮を盛り上げ、課題を解決していく「自治寮」でした。振り返れば、そこで得た経験や思い出が、僕自身の大学で学ぶ活力になっていたのです。この原体験から「自分も学生の支援をやりたい」「若者が座学では学べないような、コミュニケーション力や一緒に何かをやる楽しさを学べる場をつくりたい」と思うようになりました。

社会課題を解決する「地域にひらかれた学生寮」

現在、僕は糸島市や福岡市西区の九州大学周辺で、「熱風寮」というシェアハウス型の学生寮を7棟運営しており、39名の寮生が暮らしています。築40年ほどの物件や明治時代に建てられた築160年を超えるような超古民家をリノベーションして活用しています。

この「地域にひらかれた学生寮」の運営は、三つの社会課題に対するアプローチでもあります。一つ目は「大学生の経済事情」です。近年、大学生の約半数、国立大学である九大生でも多くの学生が奨学金を借りて学んでいます。そうした学生の生活を支援するため、周辺の平均より家賃を1万〜1万5000円ほど安く設定し、スーパーが遠い寮では「お米食べ放題」の配給も行っています。1年で10kg太った学生もいましたが、非常に重宝されています。

二つ目は「空き家問題」。糸島市内だけでも約1200軒もの空き家があると言われています。初期投資を抑えつつ、大家から空き家を借り受けてリノベーションし、事業収益を回すビジネスモデルを構築しました。

三つ目は「地域の担い手不足」です。糸島でも過疎化や高齢化が進む地域があり、お祭りや河川清掃などが成り立たなくなっています。そこに学生という「若者」が入っていき、地域の担い手としての役割を果たすことを目指しています。

 

寮を飛び出し、多様なタッチポイントでまちと交わる

学生たちが大学生活において地域と関わる接点をつくるため、僕の活動は学生寮の中だけにとどまりません。九大生は約1万3000人いますが、彼らが寮以外の学生や地域の人たちと交わる多様な「タッチポイント」をつくってきました。

例えば「マルベリーハウス」というカフェ&バー。これは当時、大学地近くの前周辺に学生が憩える場所がなかったことに課題を感じていた九大生から「手伝いたい」と熱いメッセージをもらい、お互いに資金を出し合って一緒につくった店です。店の前には、学生たちが農家と交渉して設置した無人野菜販売所もあり、その売り上げの一部が学生団体の運営費になるという、地域に溶け込む良い循環が生まれています。

ほかにも、商店街の洋服屋の跡地を活用した「糸島の顔がみえる本屋さん」は、100枠ある本棚を個人がシェアしてオーナーになる仕組みです。店番もオーナーたちがシフト制で担当し、人件費をかけずに100人もの人たちが関わるコミュニティーとなり、商店街ににぎわいをもたらしています。さらに、病院の空き施設を活用したコワーキングスペース、地域の子どもたちの居場所となる駄菓子屋、古民家ゲストハウスなど、数多くのプロジェクトを立ち上げてきました。

 

学生たちの挑戦が、地域に好影響の連鎖を生む

こうした環境の中で、学生たちは自ら主体的に動き始めています。ガレージ付きの寮に住む学生たちは、「もろきち」という寺子屋を立ち上げました。入寮して1週間後には自らビラを作り、毎週末、地域の子どもたちを集めて勉強を教えたり、科学実験やものづくりを行ったりしています。 また、2024年にはコロナ明けを機に、寮生たちが中心となって「熱風祭」という地域に開かれたお祭りを企画しました。地域の飲食店にも出店してもらい、なんと1000人もの地域の人々が集まってくれたのです。

地域にとっては、若者が担い手となり、将来的に移住・定住してくれる可能性が高まる。学生にとっては、チャレンジできるフィールドがあり、リアルな社会課題に触れ、多様な大人と出会うことでキャリアを考える際の参考になる。まさに双方にとっての好循環が生まれています。

もちろん、シェアハウスに住んでいれば、シンクに洗い物がたまるといったトラブルも起きます。でも僕は、あまり介入しないようにしています。「課題やトラブルはそこにあるもの。それとどう向き合うかも一緒に勉強しよう」と伝えています。課題から逃げるのか、ちゃんと向き合うのか。学生時代にそれを経験することは、社会に出たときの大きな「生きる力」になると信じているからです。

「Pターン」で地方を元気に。100のプロジェクトが稼働する未来へ

僕が中長期的な構想として掲げているのが「Pターンプロジェクト」です。 地方の大学に進学したユニークな学生が、卒業後は東京や大阪など大都市で就職してスキルや人脈を築き、いずれまた大学時代に過ごしたこの地域に戻ってきて移住する。地図上で描くと「P」の字のようになるこの流れをつくりたいと考えています。

そのためには、学生が地域に愛着を持ち、実学を学べる環境が必要です。僕は2027年までに、熱風寮生をはじめとする若者たちを起点に、年間100件のプロジェクトやイベントが稼働する状態を目指しています。人と仲良くなること、人とのつながり(ソーシャルキャピタル)こそが何よりの資本であり、自分自身の幸福度を上げてくれます。糸島というフィールドで、これからも若者のやりたいことを後押しし、地域に「イキイキ人」を増やす波を起こしていきたいと思っています。

(2026年3月公開)

 

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