柔軟な選択で物件の価値を創出

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リノベと柔軟な賃貸・再販の選択で
リスクを抑えつつ価値を創出

 賃貸不動産オーナー業を主としながら売買も手がける山本恭弘オーナー。その不動産経営における選択の幅は広く、臨機応変に物件と向き合っている。

山本恭弘オーナー(大阪市)

家賃収入メインに売買も行う

 山本恭弘オーナーは、賃貸不動産オーナー業をメインにしながら、自ら宅建業免許を取得し、収益物件の売買仲介も行っているマルチプレーヤーだ。経営における武器として、長期的目線と柔軟性を挙げる。

 同じ物件でも、所有して賃貸を想定する場合と、リフォームして実需向けの売却を想定する場合では、見るポイントが違うのだという。

 「最終的な出口はどちらの場合でも考えます。買って貸す以外には、再生販売や解体して更地にする選択肢がある。そういった意味では『家主業だけ』のパターンより買える物件が多いと思います」(山本オーナー)

 自分で賃貸不動産として所有する場合は、まずその物件で何ができるのかを考える。立地、その物件の持っている特色のほか、収入と返済のバランス。すでにプロが満室にしている物件などにはあまり興味がない。収益の最低ラインとして「手残り約3割」を目安としている。

 ただし、これはあくまで目安で、立地や賃料上昇の可能性、長期的に建て替えを行った場合などを綿密にシミュレーションして、最終的に利益が出ると判断すれば購入するという。
「購入価格とリフォーム費用を計算し、収益が見込めると考えられれば『買い』です」(山本オーナー)

 

 次に実需向けに売却することを前提とする場合。賃貸では収支が合わず、買取再販なら活用が見込めるケースもあるという。違いがあるのはなぜなのか。

 「一番の違いは住宅ローンです。わかりやすい例は築40年の区分マンションでしょう。家主が買う場合は、アパートローンで『耐用年数─築年数』の返済期間を設定されるようなケースだと思います。それが実需向けなら購入者は「フラット35」が使える。賃貸向けか実需かで、返済期間に違いが出ることが多いのです。月々の支払額から見て、賃貸では難しいけれど、実需向けなら売れる物件というのが存在します」(山本オーナー)

 このように、山本オーナーには購入後にどう活用するかバリエーションがある。さらに言えば、当初は賃貸しようとして購入した場合でも、しばらく保有して残債が少なくなってから、最終的に売却に切り替えることもできるのだ。

結婚翌日無職に家主になる夢を思い出す

 そんな山本オーナーが不動産経営に興味を持ったきっかけは、10代終わりから20代の頃に飲食店で働いた経験だった。店の売り上げには波があるが、不動産は安定して24時間365日働いてくれる。「家賃収入はいい」。そのことに山本オーナーは気付き、将来自分の店を持つよりも、家主になりたいと思うようになったという。

 この経験から30代は不動産売買営業や不動産ファンドに勤めた。利回り、家賃と返済のバランス、キャッシュフローの知識や実務経験を蓄えた。

 だが、初めて勤めた上場会社は収入が良かったので、いつしか家主になるという夢も薄れていき「このまま勤めている状態も悪くない」と思い始めていたという。

 しかし、2008年3月に事件は起きた。勤め先だった上場会社が民事再生法の適用を申請したのだ。

 「一報は私の結婚式の翌朝、ホテルで読んだ朝刊で知りました。結婚即無職。もう自分で独立するしかないと不動産事業を行うことにしました。この時に改めてかつて描いた家主業への憧れを思い出したのですが、お金も何もない。ただ不動産の取引はできるので、まずは独立して、資金がたまったら家主業をやりたいと思いました」(山本オーナー)

 

 飲食事業で培ったコミュニケーション力もあり、大手が手を出さない案件を中心に地道に売り上げを伸ばしてきた。現在山本オーナーが個人と法人で経営するのは、住居約50戸とテナント6フロアだ。具体的にはテナントビル1棟、シェアハウス2棟、アパート3棟のほか区分マンションなどを所有している。これらの物件は収益性との兼ね合いで、築古をリフォーム・リノベーションしたものが多い。

 年間の家賃収入は3500万円ほど。あくまで事業の主体は賃貸不動産オーナー業だ。

「確かに売却や売買仲介の1回の利益は大きいのですが、家賃収入は何といっても安定しています。また自分が所有・運営する場合は長く付き合うことが前提ですから、ある程度自分の好きなように手を入れられるのもいいところだと思います」(山本オーナー)

大阪メトロの駅から徒歩2分の好立地

 ビルとの出合い

 2012年に初めて自身で購入した物件はテナントビルだった。不動産事業で独立して2年、手元に資金はほとんどなかった時期に、知り合いの仲介事業者から紹介を受けた。築年数こそ古いけれど、大通りに面した駅近のRC造の物件だ。

 必要な自己資金と家賃収入などについて妻と話をしていたところ、妻からの資金協力と借り入れでなんとか買えそうなことがわかったので、すぐに取引先の信用金庫に相談。その後、購入に至る。こういう事情からテナントビルは山本オーナーと妻の共有となっている。

「ビルは耐用年数を過ぎても建物としてはまだ十分に使えます。これからも大切にメンテナンスしていきたいです」(山本オーナー)

 

事業の継続性視野に さらなる成長目指す

 事業を始めて15年、所有棟数は増え家賃収入も増えたが、修繕費も増加し、決して安泰なわけではない。これからは事業の継続性を考え、所有不動産の買い替えや、建て替えなどにも本腰を入れる。今後の目標は、家主として成長することだ。

 

 「物件との出合いありきなので具体的な目標数値はないですが、時々売買仲介を行いながらも基本的には家賃収入を増やしていきたいと考えています」(山本オーナー)

 築古が多いがゆえ、これから多くの選択に迫られるだろう。山本オーナーは「新しいステージでも、家主としてさらに成長していきたい」と抱負を語った。

(2026年7月号掲載)

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