不動産と相続の話はタブー?!

コラム永井ゆかりの刮目相待#連載

<永井ゆかりの刮目相待:10月号>

連載第97回 不動産と相続の話はタブー⁉

ほかの人には話せない

 先日、高校時代の友人と久しぶりに再会した。その際に友人の夫が不動産投資をしているということを知り、仕事柄その話題で盛り上がった。友人の口から出てくる話は夫が始めたきっかけや勉強方法、苦労話、さらには近隣トラブルなどの興味深い内容ばかり。その話の最後に彼女は「こんな不動産投資の話、ほかの人にはなかなかできない」という言葉をほっとしたような顔で漏らした。

 そうなのだ。この業界にいるとつい感覚が鈍るのだが、不動産、とかく投資の話は世間ではネガティブなイメージを持たれてしまう。もう一つ、今回友人と話していて気付いたのは、不動産について悩んだり、相談したいと思ったりするのは当事者だけではないということ。家族も同じように不安を感じているのだ。

 友人に、夫から収益不動産を購入したいという話があった時にどう思ったのかを聞いてみた。すると、「最初は不安だったけれど、夫がとても勉強熱心なことはわかっていたし、結構状況も話してくれるので、信じている」とのことだった。状況について話すということが、家族が抱えている不安を解消するために重要だということがよくわかる事例ではないか。

 家族が直接不動産に関わることがなくても、状況を共有することで、不動産に対する家庭内の誤解は解けそうだ。

平穏な家族関係

 不動産のこと以上に触れにくい話といえば相続だろう。家族内ですら話題にしにくいからだ。

 相続には遺産がつきまとう。遺産争いなどは古今東西起きていることであり、死に関わること。親が自ら積極的に話題にするのであれば、いざ知らず。遺産を受ける配偶者や子どもからはよほど大きな問題に直面していない限り話題にできないだろう。つまり、世間一般的には「相続の話題=タブー」だったのだ。

 ところが、15年ほど前に大手新聞に、本誌が「相続のタブーに挑む」というタイトルの特集を掲載した広告を出した時に、ものすごい反響と購読申し込みがあった。考えてみれば、それまでに雑誌の広告で「相続」という単語を大きく掲載したものはほぼなかったと言える。

 本誌の特集で何度も紹介してきたが、相続対策は後手に回るとマイナスしかない。家としての財産は減るし、家族内の関係性も変わることがあるからだ。

 相続は死に関係する話であるものの、「家」を守るために相続が発生する前の対策は必要である。対策を講じるためには、家を承継する次世代に対して、自身がどのような思いで資産を築いたり守ったりしてきたのか、その資産をどのような形で承継することで、平穏な状態で家族関係が維持されるのか、そういう対話が重要になってくる。

 仲の良い家族と思っていても、それぞれの内情は意外にわからないものだ。借金の額や抱えているトラブルなど、家族であっても、いや家族だからこそ話しにくいことについて、隠しがちだろう。だが、せめて親の内情だけは知っておかないと、残された家族は相続後に大変な目に遭う。

 不動産投資も相続もタブー視せずに、普段から家族との対話を心がけることが重要だ。

永井ゆかり

永井ゆかり

Profile:東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。

(2025年10月号掲載)

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