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<永井ゆかりの刮目相待:11月号>
連載第98回 時代の移り変わりを知る
トレンドがわかるフェア
9月中旬だというのに、最高気温は30度超えの東京。そんな夏の暑さが残る中、毎年盛り上がりを見せるイベント「賃貸住宅フェア」を今年も「東京ビッグサイト」で開催した。2日間で1万4000人近い業界関係者に来場いただいた。来場者の皆さまにはこの場を借りて御礼を申し上げたい。ありがとうございました。
今年は南展示棟ということでコンパクトな会場での開催となったが、昨年よりも多い企業が出展。業界のトレンドがわかるさまざまな商品やサービスが展示された。
初出展となった商品は、近年の豪雨対策として建物入口に設置する止水板や、セキュリティーの一つとして注目したい簡単に設置できて換気も可能な面格子用目隠し材。そして、最も目立ったのは、電動バイクや電動自転車のシェアモビリティーだ。シェアモビリティーについては、代表する4社が出展し、試乗会場も設けた。
ついに、このサービスも賃貸住宅の敷地に着目してポート設置を進めはじめているのだ。以前、弊誌の取材でLuup(ループ:東京都品川区)の岡井大輝CEOは「電動キックボードが地区全体の価値アップにつながる」と話していた。ポートを設置することで、最寄り駅からの徒歩分数という条件に縛られずに入居者の募集ができるようになるだろう。時代の変化を感じずにはいられない。
聴講者が講師に
セミナーもまた盛況だった。不動産会社向けセミナー、賃貸経営・法律税務セミナーのほか、昨年に引き続きリフォーム産業新聞社との合同企画「空き家活用サミット」、そして今年新設した「主催者特別企画セミナー」「遊休不動産活用セミナー」を用意した。
私はセミナーの一つとして行われた座談会「ローカルに幸せな日常を。地域を元気にする若手後継者の賃貸経営」の司会進行役を担当した。登壇したのは、10年前に当フェアのセミナーで講師を務めた大家の学校を主宰するまめくらし(東京都練馬区)の青木純代表と、同じく10年前にそのセミナーの聴講者だったミフミ(相模原市)の役員、渋谷洋平氏と純平氏の2人、そして神奈川県藤沢市にある「ちっちゃい辻堂」の石井光オーナー。感慨深いのは、10年前は一聴講者だった渋谷オーナー兄弟が、青木代表のセミナーを聴いて以降、見聞を広めながらいろいろなことに挑戦し、今年はこうして登壇者として話したことだった。
郊外に不動産を持つ渋谷オーナー兄弟と石井オーナーは、地域とのつながりを感じることができる点を唯一無二の付加価値とし、賃貸住宅を育ててきた。その一歩として地元にあるコミュニティーに参加し仲間を増やした。
ハードだけに頼る不動産の価値づくりには限界がある。顔見知りを増やすコミュニティーづくりは時間がかかるが、だからこそ、大きな価値となる。そんなことを今回の座談会で知ることができたと同時に、賃貸住宅フェアは業界関係者が成長できるイベントなのだと実感した。
永井ゆかり

Profile:東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。
(2025年 11月号掲載)