古本・古書は意外なものに高値が付く

コラム眠っているお宝

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古本・古書

意外なものに高値が付く

 「古本」と「古書」の違いは曖昧だが、古本は一度でも誰かの手に渡った本や大衆的な内容を指し、古書は絶版本や歴史的な価値のある、より古く希少価値が高いものを指すと捉えられることが多い。

 古本・古書の買い取りというと、立派な装丁の本や全集などに価値があると思う人が多いかもしれない。しかし実は、岩波文庫や講談社学術文庫などの文庫本や状態の良い昔の雑誌などのほうが、高値が付きやすい。前述のような本は捨てずに取っておく人が多いため、希少価値が低いのだ。一方、雑誌は読み終えると捨てられてしまうことが多く、きれいな状態で保つのが難しい。そのため保存状態の良いものであれば、高値が付く可能性が高い。

 「だからこそ本だけでなく、昔のパンフレットやカタログ、チラシ、雑誌などがあれば、処分してしまう前に連絡してほしいと思います」と話すのは、総合古書店「愛書堂よみた屋」を運営する、よみた屋(東京都武蔵野市)の澄田喜広代表だ。同店では第2次世界大戦前の古本・古書も積極的に買い取っている。澄田代表は年間150回ほど出張買い取りを行っており、良い本があれば遠方まで足を延ばすこともある。

 「10年ほど前、国文学の専門書が大量にあるお宅に行きましたが、何百冊あってもまとめて1万円でしか買い取れませんでした。ところがその横に、ごみとして処分されようとしていた古い雑誌が数十冊あったのです。そちらのほうが格段に需要があることをお客さまに話して、高値で買い取りました」(澄田代表)

 古い雑誌の中でも価値があるのが、大正時代から第2次世界大戦前にかけて発行された子ども向けの雑誌だ。「少年倶楽部」や「譚海(旧・少年少女譚海)」は特に人気で、幼少期に親に買ってもらえなかった、もっと読みたかったと思っている中高年男性が大人買いするのだという。

▲少年向け雑誌。どちらも売り値は2万2000円(税込み)

 1970年代から80年代にかけてはやった少女漫画も人気がある。例えば70年代半ば~80年代半ばにかけて活躍した漫画家・内田善美の作品は、本人の意思で再刊はされておらず、絶版になっている。現在は入手困難なため、入荷するとすぐに売れるという人気ぶりだ。

▲絶版になっている内田善美の代表作も人気

 また通常はサインをしない著名作家のサイン本も希少価値が高い。例えば人前に出るのを嫌がった松本清張や村上春樹は、それに該当する。「もし村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の初版にサインがあったら、最低でも50万円の値が付くはずです」(澄田代表)

お話を聞いた鑑定のプロ

よみた屋(東京都武蔵野市)
澄田喜広代表

20歳で古書業界に入り40年の鑑定歴を持つ。1992年、よみた屋を創業。元東京古書組合理事。著書に「古本屋になろう」がある。

■店舗情報

東京・吉祥寺にある総合古書店。「おじいさんの本、買います」をうたい文句に出張買い取りも行っている。

(2025年12月号掲載)

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