やっかいで売るのが難しい家具

コラム眠っているお宝

<眠っているお宝 目の付けどころ:vol.11>

家具

 生前整理・遺品整理など、何らかの理由で所有する「お宝」を処分する場合、最も厄介で売るのが難しいのが家具だろう。場所を取る家具はテナント料を考え、買い取らないリユースショップが増えている。そのため、土地の売却を急いでいる場合は、家具ごと解体事業者に引き渡してしまう人も少なくない。

 「近年、『実家じまい』をする人が多く、鑑定依頼も増加しています。しかし高値で買い取れるのは、需要のあるブランド物か希少なビンテージ家具に限られます」と語るのは、中古家具店「アンティーク家具ラフジュ工房」を運営するラフジュ工房(茨城県常陸太田市)で買取鑑定士を務める岩間幸夫専務だ。同店ではヨーロッパや北欧、日本のアンティーク家具を中心に買い取り、リペアを施して主にインターネットで販売している。

 一般的に人気があるブランドは、現代家具ならイタリアの「カッシーナ」や「アルフレックス」、北欧の「カール・ハンセン&サン」など。日本ブランドでは「松本民芸家具」や「岩谷堂箪笥」などだ。

ジョージ・ナカシマ作の右アーム付きラウンジチェア

 また文化財ともいえる価値の高いビンテージ家具はコレクターからの需要がある。例えば、最近岩間専務がコレクターから買い取った椅子は、20世紀を代表する木匠のジョージ・ナカシマの作品だった。1968年に「小田急ハルク(現新宿西口ハルク)」で初の個展を開催した頃の希少なものだったこともあり80万円ほどで販売したが、すぐに買い手がついた。

意外なものに高値が付く

 家具というとメーカーが製作した商品を想像するが、実は地方の名士や旧家の蔵にある江戸時代から明治・大正時代に作られた蔵戸・格子戸・けやき帯戸などの建具や、銭箱、収納棚、船だんすといった時代箱なども文化的な価値が高く、高値が付くことがある。ところが、所有者はそれを知らず、ごみとして処分してしまうことが往々にしてある。

富山県の庄屋の蔵を解体した際に出てきた格子蔵戸

 「半年ほど前にも富山県の旧家から依頼があり行ったところ、蔵に最高級なけやき材で作られた重厚な格子蔵戸(引き戸)がありました。プロでなければその価値はわからず、廃棄されていたでしょう。当社が家具を主体としつつ総合買い取りをしているのは、こうした貴重な文化財が失われてしまうのを防ぎたいと考えたからです」(岩間専務)

 家じまいや家具の売却を考えているのなら、まずは専門の鑑定士を呼んでほしい。処分する予定のものが、意外なお宝である可能性を秘めているのかもしれないのだ。

お話を聞いた鑑定のプロ

ラフジュ工房(茨城県常陸太田市)
岩間幸夫専務

買い取りの責任者として、年間300件以上の鑑定を行う。20年間の総買い取り数は100万点を超え、全国にリピーターの顧客がいる。

■店舗情報

大型倉庫に約3万点の在庫を持ち、主に通信販売を行う日本有数のアンティーク家具店。

(2026年 1月号掲載)

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