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<永井ゆかりの刮目相待:3月号>
連載第102回 法改正との向き合い方
税金対策ありきでいいのか
毎年、年末年始は税制改正大綱の話題が持ち上がる。本誌の今号にも詳細の記事を掲載しているが、2026年度は相続税に関する部分が改正された。
やはり最も注目したいのは取得後5年以内の貸し付け用不動産の評価方法の改正だ。融資を利用した賃貸住宅の新規取得や、所有地での賃貸住宅の建築などにより、相続財産評価額を下げるという「相続対策の王道」にメスが入った。
ただ、通達の発遣日までに、被相続人らが当該発遣日の5年前から継続して所有している土地の上に新築または建築中の家屋については、経過措置として従来の評価方法が採用される。その点がクローズアップされると、増税リスクも回避できるうちに賃貸住宅を建築しようと考える地主も出てくるだろう。
もともと新築を計画していたケースは別として、特段いつ新築物件を建てるのか決まっていなかったケースでは「相続税が高くならないように」と安易に進めるのは危険だろう。
かつて13年度の税制改正大綱で相続税の基礎控除が下がった際、1年の経過措置があり、15年から適用となった。当時住宅メーカー各社のセミナーに多くの人が参加し、盛況だったことを思い出す。その結果、13年に賃貸住宅の着工件数が急増し、以後5年間は高水準の件数で推移した。
やはり、税金が増えるとなると、対策に向けた動きは早い。
今回はどうだろうか。対象となる地主の賃貸住宅新築については13年度の税制改正大綱よりも、税金に関するインパクトが小さい。駆け込みによる建築の検討という点でも、今のところそこまで目立った動きはないようだ。恐らく、以前よりも建築費が高騰し、金利も上昇局面となると、税制が改正されるからといってすぐに判断して動ける状況ではないからだろう。
ある意味、冷静な判断ができているといえる。
相続対策は健康が大事
先日、ある老舗の家主の会の新年会で、公益社団法人東京共同住宅協会の谷崎憲一会長があいさつで今回の税制改正大綱について触れていた。その中で最も印象的だったのは「税制改正で税金負担が増えますが、結局相続対策で大事なことは健康でいることです」という話だった。
今回の税制改正で「相続発生前5年以内」の相続・贈与については、改正後の評価方法が適用される。つまり、相続発生の5年より前から対策を完了しておかないと、これまでよりも相続財産評価額が高くなり、税金も高くなるわけだ。
だが、いつ相続が発生するかはわからない。1年後かもしれないし、3年後かもしれない。だからこそ、早めの対策はもちろんのこと、親には健康で、円滑に次世代への承継をしてもらうことが重要となるのだ。
いずれにしても、賃貸住宅建築は節税対策が最大の目的であってはいけない。事業として、入居者に支持される賃貸住宅を建てることで経営は安定し、次世代も喜んで受け継ぐだろう。今回の税制改正大綱は、改めて賃貸住宅を建てる目的を考えるいい機会だと捉えたい。
永井ゆかり

Profile:東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。
(2026年 3月号掲載)






