【連載】人生100年時代 中高年のコミュニケーション:11月号

相続相続手続き

親の具体的な考えを確認する 当事者間の情報共有も大切

対話で「争続」を避ける

 今回は「相続について話す」テーマの4回目、「親と話す」をお届けします。

 現在、親と一緒に不動産事業に携わっている人も多いと思います。

 親が元気なうちから少しずつ事業内容の引き継ぎをしたり、資産全体を把握したりしておくと、後に相続が発生したときに慌てなくて済みますし、相続税の申告などもスムーズに行うことができるメリットがあります。

 一方で、資産をどのように分けるのかまでは具体的に親から話をされておらず、こちらから聞いていいものか考えあぐねているという話もよく聞きます。

 高齢になってくると、今は元気そうに見えても、いつ何が起こるかわかりません。親がきちんと考えているだろう、そのうち聞いてみよう、と後回しにしているうちに、突然親が倒れてしまうことも考えられます。もちろん税理士や公認会計士がきちんと管理していれば法律上の問題はないでしょう。しかし、どのような考えで相続財産の分け方を決めたのか、親の意向をはっきりと確認しておいたほうが、相続発生時に「争続」にならず、より円滑な手続きができると思います。

情報はできるだけ共有する

 本当は親のほうから相続について話を切り出してくれるといいのですが、親の中には「まるで自分が死ぬ準備をしているようで気が進まない」などと感じる人もいるようです。

 もし親のほうから話してくる気配がないようなら、私は子どものほうから話題にしてもいいと思います。

 その際、きょうだいもしくは法定相続人になる人がほかにもいるようであれば、まずその人たちに「親に相続の話をしてみる。同席してほしいが、無理なら話した内容は後日連絡する」と先に伝えておきます。相続は金銭が絡むだけに、後になって「内緒で親と話して、自分に有利になるように図ったのか」などと誤解され、トラブルになる可能性があるためです。

 また、ほかの人たちが同席できなければ、相続についての希望や質問事項を併せて確認しておき、親に伝えましょう。
実際に話をしてみると、親の相続に対する思いが子ども側の意見と合わないというケースはよくあります。できれば親が元気なうちにお互いの希望をできるだけ擦り合わせて、それぞれが納得いく形で資産承継ができるといいと思います。


佐藤 栄子プロフィール


不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。

(2024年11月号掲載)

一覧に戻る

購読料金プランについて