【連載】人生100年時代 中高年のコミュニケーション:1月号

相続権利調整

きょうだいの間で生まれる相違 環境が違っても会話で理解を深める

今回は「相続について話す」テーマの6回目、「きょうだいとのコミュニケーション」です。

介護や相続を機に向き合う

 「きょうだいは他人の始まり」ということわざがあります。きょうだいでも成長すれば結婚や利害関係などによって、お互いに情愛も薄れて他人のようになるというたとえですが、カウンセリングで耳にする人間関係の悩みにも「対きょうだい」に関することが多くあります。

 子どもの頃は仲良しであっても、就職や結婚などを経て「生きている環境が違う」状態になると、お互いが相手の状況を想像しづらくなります。その結果、理解ができずに次第に疎遠になることは、ある程度仕方がないと思います。同じ親から生まれてもそれぞれ個性も志向も違いますし、無理をして仲良くする必要はないでしょう。

 しかし、親の介護や相続が発生して、改めてきょうだいと向き合ったときに、家族や家に対する思いの違いが明確になり、争いに発展することがよくあります。家族だけに言葉に遠慮がないため、お互いを非難したり傷つけたりの応酬がひどく、一度もめると関係の修復が不可能になるケースがほとんどです。

説得せずまず理解を試みる

 人は成長する過程で親に対して何らかの理由により否定的な考えを持った場合、きょうだいにも同様にネガティブな感情を持つことがあります。そして親に言えなかった不満を代わりにきょうだいへぶつけて心のバランスを取ろうとします。

 カウンセリングで本人の気持ちを深掘りしながら聞いていると、本来の問題は目の前のきょうだいとの関係ではなく、親への思いだったということに気付く人が多くいます。

 もし、普段から関係が疎遠になっていて、あまり仲が良くないきょうだいがいる場合は特に、親が元気なうちに実家や相続に対するそれぞれの考えを共有すること。そして違いがあればどのような対応をすべきか、早めに検討しておくことをおすすめします。

 ポイントになるのは「共感はできないが理解はする」というスタンスで、自分の正しさは相手と違うことを念頭に、説得しようとしないことです。

 他人の始まりといっても、きょうだいは生まれてから最初に過ごしたコミュニティーの一員同士です。相続の話をきっかけにお互いの親や家族への思い、現在の生活環境などを理解し合って、少しずつ良好な関係に変えていけるといいと思います。

佐藤 栄子


[プロフィール] 不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。

(2025年1月号掲載)

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