<<Focus 〜この人に聞く〜>>
歴史ある家主の会で初の女性代表理事
相互扶助で共通の承継問題に取り組む
JRMA(ジャルマ)は首都圏近郊の地主が参加する家主の会だ。市川信子氏は同会が一般社団法人化してから初の単独女性代表理事として2025年1月より着任した。「JRMAに恩返しをしたい」という気持ちから受けたという。
一般社団法人日本不動産経営協会(東京都港区)
市川信子代表理事

――入会から13年目の代表理事就任です。
私は2004年に父親から不動産を引き継いだのですが、当初は課題が多いと感じていました。ただ、具体的に何が問題で、どう対処したらいいのかは明確にはわかっていない中、JRMAに入会しました。
――入会後、何を学びましたか。
例えば、かつて所有していた築古物件。利回りはよかったのですが、このまま減価償却が取れなくなった際に所得税を多く取られることがわかり、売却を決めました。「デッドクロス」という言葉を知ったのはその時です。また経営を圧迫しそうな物件を売却し、新たな物件を購入する重要性を知ることができました。JRMAの存在がなければ、私の賃貸経営はどうなっていたかわかりません。
――資産組み換えでは海外の物件も購入しました。
2024年、オーストラリアのメルボルンに区分マンションを購入しました。この物件購入も、JRMA主催のセミナーで海外不動産を学んだことがきっかけです。
――会員同士のつながりも強い会です。
もともと当会は1人の「カリスマ家主」が主宰しているわけではなく、共に学びながら、相互扶助で賃貸経営をよりよい方向にしていこうという会です。賃貸経営は、所有物件もエリアも十人十色。その点では個別性が強いですが、地主同士、共有できる情報は多いです。また同年代の経営者がいることで、相談がしやすいですね。お互いに刺激し合えるという良さもあると思います。
――26年には設立45周年を迎えます。会員たちが持つ課題は何でしょう。
入会した当時は30代だった会員たちも、今は75歳を過ぎています。共通の悩みは事業承継です。現在、スムーズな事業承継への一助として、次世代が賃貸経営を学ぶきっかけとなるよう、親子会員制度をつくっています。いずれ相続する予定の息子や娘たちの交流会を行う予定です。
――若い世代同士が知り合うことで事業承継への理解度が高まるのでしょうか。
親子間になると、どうしても感情の問題が発生します。例えば、私の場合、父親の相続発生時の苦労を乗り越えて、現在は賃貸経営を安定させたという自負がありそれを子どもに押し付けてしまいます。それで、子どもの反応が薄いと余計にイライラしてしまう。その点、子どもたちも同世代同士の集まりであれば、親世代がやりがちな「昔語り」を聞かされずに済みますし、何より自分と同じ立場の次世代のオーナーが何を考えているのかと刺激になることもあるでしょう。また、家主業は孤独になりがちです。若いうちから将来の賃貸経営について話すことができる仲間を持てるのはいいことだと思います。今後、相続に特化した勉強会も開催していく予定です。次世代へのバトンタッチを一つの切り口として活動していきたいと思います。(長谷川律佳)
東京都足立区に土地を受け継ぐ地主。アパート5棟、長屋、戸建てを所有。
(2025年9月号掲載)