建て替えや修繕で老朽化に立ち向かう

相続事業継承

<<地主の挑戦:1>>

彦根駅前に地元の顔となる7棟のビル
建て替えや修繕で老朽化に立ち向かう

JR東海道本線彦根駅近くの所有地でビルや賃貸住宅、駐車場を経営するのが滋賀県彦根市彦根の地主である上野家の法人、上野ビル(滋賀県彦根市)だ。代々しょうゆ製造事業を行ってきたが、父の代にブランドを譲渡。所有地を生かして不動産経営を始めた。若くして引き継いだ上野喜紹オーナー(同)の約30年について聞いた。

上野喜紹オーナー(滋賀県彦根市)

▲上野第Ⅶビルの前にて

約1万9000㎡の土地 テナントやオフィスビルを経営

 上野家が所有している土地は、彦根駅近くのエリアに個人所有と法人所有を合わせて約1万9000㎡(6000坪弱)。その土地で、テナント・オフィスビル7棟、アパート3棟27戸、駐車場18カ所(約480台分)、倉庫を経営している。「8割方、父や母から相続したもので、自分の代で増やした土地が2000㎡ほどです」(上野オーナー)

 7棟のビルは「上野ビル本館」と「上野第Ⅱ」~「上野第Ⅶビル」。上野第Ⅶビルは「上野第Ⅰビル」を建て替えたものだ。竣工年は上野ビル本館と上野第Ⅱ~上野第Ⅴビルが1971~83年、上野第Ⅵビルが2005年、上野第Ⅶビルが21年。所有ビルの多くが築古となっている。


 オフィスビルに入居するのは、大企業の支店が多い。上野オーナーのモットーは、地元の人が快適に働けるようメンテナンスを欠かさないこと。上野オーナーの代になってからは、修繕や建て替えの時期にも差し掛かっている。修繕は高頻度で行っており、これまで実に13回ものリニューアル、修繕を実施。また20年に築50年を超えていた上野第Ⅰビルを解体、21年に上野第Ⅶビルに建て替えた。

 一方、所有しているアパートは築37年、34年、8年の3棟。なお4年前(21年)に築40年超の1棟を解体して駐車場に転用した。

 不動産の年間収入は約2億円。上野オーナーはこの売上高を維持、将来的には伸ばしていく方針だ。その理由の一つに株式の評価がある。上野ビルの場合、自社株評価は類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式を使用する。会社規模により類似業種比準方式と純資産価額方式の割合は異なり、(類似業種比準方式×0・75)+(純資産価額方式×0・25)の計算式となる。「売り上げが2億円を超える会社規模区分であれば株価が2〜3割下がるのです。これは株の贈与による事業承継に都合がいいので、年商が2億円を切らないように調整しています。また今の売上高はぎりぎり2億円なので、空室リスクに備えてもっと売り上げを伸ばしていきたいです」(上野オーナー)

▲上空から所有ビルを望む

「彦根を創り、彦根を育む」

 上野ビルのウェブページを開いてまず目に飛び込むのは「彦根を創り、彦根を育む」の文字だ。滋賀県は東海道新幹線や国道が通る交通の要所である。
 「古く歴史を振り返ってみると、彦根市は、琵琶湖の東岸にあり、戦国時代に有名な武将が配置されているのです。歴史的にも非常に重要な場所でした。その重要な場所に受け継いだ土地がある以上、それを生かして湖東のエリアを盛り上げたいと思います」(上野オーナー)
 生まれ育った彦根の地を発展させていきたいと上野オーナーは考え、所有する土地が地元の役に立つように経営してきたという。
 「駅前にどんな建物を造るかでまちの印象やエリアの就労環境に大きな影響があります。この土地を所有する家として、どのように土地活用していくのかを大切に考える責任があると思うのです。有力企業の彦根支店や、地元の人が働きがいを持ってくれるようなオフィスなど、まちの顔をつくっていきたいです」(上野オーナー)

彦根市キャラクター
ひこにゃん ©彦根市

 

(2025年9月号掲載)
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家業はしょうゆ製造、父が始めた不動産事業を承継

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