座談会:賃貸経営を成功させた異業種からの転換

相続事業継承

<<オーナー座談会 後継ぎの決断>>

賃貸経営を軌道に乗せて
成功させた異業種からの転換

時代が大きく変わる中で、親から引き継いだ家業の継続が難しくなった。そうした転換期に不動産事業を選択し、安定的に発展させている静岡県在住の3人のオーナーから、不動産事業を選択した理由や先代への思い、そして次世代への承継について話を聞いた。

左)松永直樹オーナー(元ガソリンスタンド経営)
中央)藤田英一郎オーナー(元コンビニ経営)
右)吉沢俊オーナー(元文房具店経営)


─皆さんは親から一度別事業を受け継いでいます。どのような事業だったのでしょうか。

吉沢 会社員を経験した後、父が経営していた文房具店に入りました。

藤田 父が始めたコンビニエンスストア経営を、父が亡くなったことをきっかけに引き継ぎました。

松永 うちはガソリンスタンドを経営していました。静岡市で創業5番目以内に入るようなガソリンスタンド黎明れいめい期に、祖父が開業しました。


─不動産事業を開始したのは20年前ということですが、家業はどういう経営状況でしたか。

松永 粗利益が非常に落ちてきていました。私は16年間ガソリンスタンド事業に携わりましたが、1リットル売ったときのレギュラーガソリンの粗利は一番多かった時で24円、一番少なかった時には2円70銭でした。さらに法律が改正されて、元売り会社も小売りができるようになった時代です。元売り会社が、10倍の大きさの店をつくって、卸価格でガソリンを売るという状況の中、小売りにとって公正な競争ができなくなりました。最後の2年は、自分の給料はスタンドでの売り上げからは出ないような状態になっていました。

藤田 私の場合も似たようなもので、自分の給料が出ませんでした。当時、1日の売り上げは60万円程度ありました。コンビニ経営としては優秀なほうだったと思いますが、それでも光熱費や人件費はどんどん上がっていく。何のために経営しているのかわからないという気持ちでした。それから、店員人材の確保も大きな問題。アルバイトが来なければ私が店に出ないと立ち行かない。実際、3時間仮眠を取ってからまたお店に立つような生活をしていましたからね。それだけ働いても給料が出なかったのです。

吉沢 文房具店も100円ショップなどの台頭で、かつてのように売り上げが上がらなくなっていました。本業が大変な状態ですから、人を雇うわけにもいかない。その状況で人を雇わずに済む事業は何かと考えたときに、出てきた選択肢が不動産事業でした。とはいえ、不動産経営を始めるまでの一歩に時間がかかりましたが……。


─最初の1棟はどのような物件を購入しましたか。

吉沢 静岡市の築23年、RC造8戸の物件でした。価格は6000万円で利回りは10%。この1棟目を買うまでに2年以上かかりました。会社の決算書の内容が悪すぎて融資が受けられない。それなのに、いきなり都市銀行に融資の相談をしに飛び込むような向こう見ずなことをしていました。

藤田 私も吉沢さんと同じく、中古物件の購入から始めました。最初に買ったのは木造14戸のアパートで、6000万円程度で利回りは15%くらいでした。私の場合、コンビニ事業で付き合いのあった銀行から比較的簡単に融資を受けることができました。

松永 うちは、もともと持っていた土地を活用する形で不動産事業に移行していきました。1棟目は2006年に竣工したRC造24戸の物件です。この土地には倉庫がありました。薬品倉庫として賃貸に出していたのですが、退去が決まり、月55万円ほどの賃料がなくなってしまったのです。地元工務店の提案もあり、賃貸住宅の建築を決めました。


(2025年10月号掲載)
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