【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:10月号

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税金を抑える ~経費の勘違い! 経費はいくら使うのが効果的?~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。
 前回は、経費は高い税率のかかる所得から控除したほうが、効果が高いと説明しました。

 今回は、よく受ける質問でもある「経費はいくら使うのが効果的か」について、解説していきます。

自分の限界税率を知る

 経費を使うことによる節税は、「割引」です。100万円の経費を使ったからといって、100万円の税金が減るわけではありません。「経費支出額×税率分」の税金が少なくなります。

 つまり、税率分を割り引いた価格で物を購入できたり、サービスの提供を受けられたりする効果があるということです。

 しかし、割引になるからといって何も考えずに経費を使うのではなく、それが本当に価値のあるものなのか、そして「お買い得かどうか」という視点で判断しなければなりません。

 そのためには、割引率を知らないといけません。自分の割引率が15%なのか、30%なのかによって、判断が変わるのです。

 所得税は、超過累進税率という仕組みになっています。図1のとおり、所得が一定の金額を超えると、超えた部分にだけ高い税率がかかります。

 この階段状の税率の中で、自分の所得に適用される最大の税率はどこなのか。例えば、課税所得1000万円の場合には、33%です。この税率を限界税率といい、これが割引率になります。

効果的な経費の金額とは

 図2は、所得税だけでなく、住民税、復興特別所得税も含めた税率ランク表(階段状の税率構造を縦に並べたもの)です。
 現在の課税所得が600万円であれば、限界税率は30・42%です。課税所得のうち、330万円から600万円までが、この税率で課税されます。
 330万円を下回ると、下回った部分は20・21%で課税されることになります。割引率が30%から20%に下がってしまうということです。
 それであれば、30%の割引率の範囲(600万円─330万円=270万円以内)で経費を使うほうがお買い得になります。
 下位の税率ランクまでの課税所得を意識して、その範囲内で経費を使うことが、効果的な経費の使い方になるのです。

解説
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。

(2024年10月号掲載)
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