【連載】家主版 転ばぬ先の保険の知識:12月号掲載

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第40回 賃貸経営に必要な生命保険を考える⑨

資産管理法人の生命保険活用法③

 賃貸不動産会社の役員は、会社が賃貸用不動産物件を保有している限り、売上金(家賃収入)が途絶えることがないという点から、早期に勇退(退職)するという発想には至らない人が多いのではないでしょうか。しかしながら、死亡による役員退任はいずれ確実にやってきます。

 前号で役員勇退時の退職金には一定の税務上の優遇策があると話しましたが、死亡退職についても税務上の優遇策があります。生存と死亡、どちらの退職慰労金が自社には向いているのかをよく検討し、それに対応できるよう事前準備をする必要があるのではないでしょうか。

役員が死亡すると 「死亡退職」となる

 役員が死亡によって退任した場合、法人から遺族へ死亡退職慰労金を支払うことができます。この死亡退職慰労金には非課税枠があり「500万円×法定相続人の人数」が死亡退職慰労金非課税枠と認められています。

 また弔慰金という別の非課税枠も認められているので、生涯現役を貫こうと考えているのであれば、死亡退職慰労金制度を制定・活用することによって確実に遺族に非課税財産を残すことができます。

生命保険の死亡保険金で死亡退職金を用意する

 早期勇退または定年退職の退職慰労金の原資を用意する場合、一般的には平準定期保険などの「解約返戻金」を利用します。保険料の一部が損金算入できるものの、解約返戻金は払込総額を下回るため、目標の金額に達するまでのコストが大きくなる傾向にあります。

 これに対し、死亡退職慰労金の原資は「死亡保険金」であるため、同じ保険商品を利用した場合でもその保険契約のスケールが小さくなり、トータルのコストは大幅に下がります。ただし保険期間が満了するまでの間に死亡退職することを前提としているため、100歳満了タイプの定期保険など、なるべく保険期間の長い保険商品を選ぶか、または保障の期限に終わりのない終身保険を選ぶ必要があります。

「役員退職慰労金規定」を事前に制定する必要がある

 生存退職と違い、死亡退職はある日突然やってきます。遺族に退職慰労金をいくら支払うのか、そもそも役員の死亡によって退職慰労金を支払っていいものなのかをあらかじめ定めておくことが不可欠です。それをしないと、非課税で遺族が受け取ることができないばかりでなく、法人の費用計上ができないということにもなります。

 多額の死亡保険金(=雑収入)を法人が受け取っていながら死亡退職慰労金などを支払うことができなければ、それ相応の法人税等が課税されることにもなります。
 必ず「役員退職慰労金規程」を制定し、取締役会や役員会などで承認を得た記録(議事録)を残しておく必要があります。これには役員全員の承認を得る必要があり、後付けでは作ることができないため、事前の準備が必須となる制度です。早めの検討を心がけましょう。

保険の豆知識

死亡保険金受取時の経理処理

 貯蓄性の高い生命保険商品は、保険料の全額または一部を資産計上します。
 そして法人が死亡保険金を受け取った場合、それまで資産計上していた前払い保険料を取り崩し、死亡保険金が前払い保険料を超過した分を「雑収入」として益金に算入します。

例)法人が死亡保険金1000万円を受け取った場合の経理処理
死亡保険金:1000万円
資産計上した保険料の累計:700万円

借方 → 現金・預金 1000万円

貸方 → 前払い保険料 700万円
     雑収入 300万円
※契約者:法人、被保険者:役員、保険金受取人:法人とした場合

解説 保険ヴィレッジ 代表取締役
斎藤慎治氏

1965年7月16日生まれ。東京都北区出身。大家さん専門保険コーディネーター。家主。93年3月、大手損害保険会社を退社後、保険代理店を創業。2001年8月、保険ヴィレッジ設立、代表取締役に就任。10年、「大家さん専門保険コーディネーター」としてのコンサルティング事業を本格的に開始。

(2024年12月号掲載)

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