税金を抑える ~経費の勘違い! 無意味な繰り延べと有効な繰り延べ~
キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。
前回、税金の繰り延べ(先送り)により、資産が目減りすることがある例を解説しました。しかし、税金の繰り延べが全く意味のない節税かというと、そうではありません。使い方によっては有効なケースがあります。
単なる繰り延べは損
例えば、毎年900万円の所得がある人が、5年後に返戻率100%になる500万円の保険(※)に入った場合を考えます。
保険に加入した年は、保険料の支払いで所得が低くなるため、税金が安くなります。5年後の解約時には、所得が500万円増額されることになります。
所得税は、以前にも説明したように、所得が高くなるほど税率が上がります(超過累進税率)。そのため、保険を解約した年には所得が増えることから税率も高くなり、高額な税金を支払うことになります。
6年間のトータルでは税金が多くなり(図1)、これでは保険に入る意味がありません。
※個人で加入する生命保険は生命保険料控除になり経費に計上できませんが、ここではわかりやすい例として、全額経費になる保険商品があると仮定して説明しています。
低所得時の収入なら節税に
しかし、税金の繰り延べを「所得をコントロールするもの」と捉えると、節税が可能です。所得は毎年一定額とは限らないため、所得が多い年に保険に加入し、所得が少ない年に解約して保険金を受け取ることができれば、税率をならすことができます。それが節税につながるのです。(図2)
つまり、収入になるタイミングを所得が低くなる年にすることができれば、税率が上がらないようにすることが可能になります。高い税率の年に経費計上して、低い税率の年に収入になるようにすると、節税になるのです。
課税の繰り延べは、利用する時点(入り口)と収入になる時点(出口)を見極めることが重要です。
解説
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士
危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年1月号掲載)
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