【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:6月号

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税金を抑える
~経費の勘違い! 減価償却費は魔法の経費か?~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。

 前回まで、税金の繰り延べによる節税商品について解説しました。賃貸経営においても税金の繰り延べはしっかりと理解しておくべきです。なぜなら税金の繰り延べの代表は、減価償却だからです。今回からは、減価償却費について解説します。

減価償却の仕組み

 減価償却費とは、高価なもの(建物や車など)を長期間にわたって使う場合、その総額を少しずつ分けて「費用」として計上する仕組みのことです。

 例えば、賃貸用の建物を5000万円で購入したとします。この建物は何十年も使うものです。仮に購入した年に5000万円を全部費用に計上したとすると、その年だけ大きな赤字になってしまい、経営のバランスが悪くなります。

 そこで、収入と費用の期間を対応させるために「その物を使うことができる期間(耐用年数)」に応じて、少しずつ費用を分けて計上する仕組みが、減価償却です。

計上のタイミングが異なる

 「減価償却費は支出のない経費」といわれますが、支出自体はあります。費用に計上する年と、実際に支出する年が異なることはありますが、支出を伴うことには変わりがないのです。
 例えば建物は、建てるために建築費を支払いますが、借り入れをしていれば、返済が後からやってきます。減価償却費とは、経費計上と実際の支出のタイミングがずれているだけなのです。それ以外の何ものでもありません。

 通常の経費との違いを見てみましょう。20万円の広告宣伝費を使うことと、5000万円の建物の購入を比較すると、お金が出ていくことは一緒です。異なるのは、その支出を計上するタイミングです。実際に支出したときに一括で計上するのか、時期を分けて分割して計上していくのか、という違いです。

 建物は減価償却中(実際の支出がない期間)にも収益を生むので得だという考え方もありますが、支出自体はあるため、減価償却費が支出のない魔法の経費だというわけではありません。

償却後も価値が残るとき

 ところが、減価償却費が魔法の経費になる場合もあります。例えば海外の建物です。海外の建物は築年数が古くなっても(例えば築50年でも)、建物の価値が下がりません。5000万円の建物を減価償却して経費として使い切ったとしても、売却したときに5000万円で売却できる可能性があるのです。

 経費として使い切った後にも、価値が残る。これが魔法の経費の正体です。しかし、日本では築年数に応じて建物の価値が下がります。法定耐用年数を過ぎた建物は、金融機関も価値があると見てくれません。

 もし購入した以上の金額で売却できたとしても、それは土地の値上がり益です。土地の値段が上がったものを、建物の価値が減っていないと誤解しているのです。

Check!

日本の建物の減価償却費は 魔法の経費にはならない


【解説】
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年6月号掲載)

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