【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:8月号

税務税金対策

税金を抑える
~経費の勘違い! デッドクロスとは~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる ②支出を下げる ③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。

 前回、減価償却の正体について説明しました。今回は、減価償却が大きく関わる「デッドクロス」について解説します。

 減価償却は税金の繰り延べなので、減価償却費を最初に大きく計上したとしても、後に少なくなる時期が必ずやってきます。

 減価償却とは、支出と経費のずれを生じさせるものです。このずれが、デッドクロスを引き起こす要因になります。

デッドクロスとは

 年間の減価償却費よりも年間の元本返済額が多くなる状態を、デッドクロスといいます。

 減価償却費は、その年に支出がないが経費になる(実際は支出の時期がずれている)もので、元本返済額は、その年に支出があるが、経費にならない(利息部分のみが経費になる)ものです。この二つは、経費と支出の関係が相反する性質になっています。

税金が手元資金を圧迫する

 下記のデッドクロスの状態にあるキャッシュフローと所得計算の表のうち、キャッシュフローの支出の元本返済額と、所得計算の経費の減価償却費に注目してください。支出が経費よりも多く、経費が少ない分、所得が増えて税金の負担が大きくなっています。そして税金は実際の支出として出ていくため手残りが少なくなるのです。デッドクロスによって、手残りがマイナスとなる可能性も出てきます。

デッドクロスの状態にあるキャッシュフローと所得計算


 元本返済額と減価償却費の金額は、年数の経過とともに変化していきます。この変化をグラフで表すと、【例】の場合、15年目で減価償却費と元本返済額が逆転します。ここが資金繰りの厳しくなる時期で、このクロスを捉えて、デッドクロスと呼ぶのです。

元本返済額と減価償却費の変化


 デッドクロスが発生した時点から、経費よりも支出が多くなるため、税金が高くなって資金繰りが苦しくなります。デッドクロスになる時期は必ず訪れますが、その本質を知っておかないと、間違った対策をしてしまうことにつながります。


【解説】
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年8月号掲載)

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