【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:11月号

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税金を抑える
~経費の勘違い! 正しいデッドクロス対策~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。

「デッドクロス=悪」ではない

 前回は、「減価償却が多く取れる築古物件を購入する」というデッドクロス対策は、減価償却が終わると税金が膨らみ、キャッシュフローがより悪化する危険があると解説しました。

 このような間違ったデッドクロス対策が、書籍や「ユーチューブ」で当たり前のように発信されています。その原因は、デッドクロスの状態を判断する次の式にあると考えます。

年間の減価償却費 > 年間の元本返済額 


 賃貸経営の問題点を、この二つの項目のみに求めてしまうことが元凶です。

 重要なのは、賃貸経営全体のキャッシュフローを見ることです。デッドクロスの状態だけが悪いのではありません。問題の本質は、キャッシュフローの悪化です。「税金が高くなる時期にどのような対策をすべきか」を考えることが大事なのです。

 キャッシュフローがマイナスになれば、借り入れの返済ができなくなるなどの支障が出ます。しかし、デッドクロスの状態でもキャッシュフローがマイナスにならない場合も多々あります。事業計画を基に、デッドクロスが発生したとしてもキャッシュフローがマイナスにならないか、確認することが大事です。

経営全体の改善を目指す

 キャッシュフローがマイナスになるのであれば、そこに対策を講じる必要があります。正しいデッドクロスの対策としては、以下のものが挙げられます。

①法人化する
 個人の所得税率が高い場合は、法人化によってメリットが得られます。課税所得が800万円以上あれば、法人の運営コスト(均等割・税理士費用)よりも節税額が上回り、キャッシュフローを増やすことが可能です。

 また法人は、家族を役員として役員報酬を支払い、所得を分散させることができます。法人の所得が抑えられ、状況によっては税率を下げられます。

②無駄な経費を削減する
 経費削減により税金は増えますが、支出を抑えることができます。そのため手残りは確実に増えます。

③空室をなくして収入を上げる
 収入増加により税金は増えますが、手残りも確実に増えます。

④物件を入れ替える
 所有物件を売却して、築浅の物件に入れ替えると、減価償却と借入返済額のバランスが改善される可能性があります。

⑤借り換えて返済期間を延ばす
 金融機関と交渉して借り換えを行い、返済期間を延ばすことで月々の返済額を減らします。ただし借り換えにはコストがかかるので、それでも借り換えるメリットがあるかどうかを検討する必要があります。

 これらの対策の中には、一時的に税金が増えるものもあります。しかし、最終的にキャッシュフローが改善されれば問題ありません。大切なのは、デッドクロスという現象だけにとらわれず、賃貸経営全体のキャッシュフローを改善するという本質を見失わないことです。

【解説】
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年11月号掲載)

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