税金を抑える
~経費の勘違い! デッドクロスよりもリリーフクロス~
キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。
前回は、正しいデッドクロス対策について解説しました。
デッドクロスという概念は、将来の資金繰りの悪化を予測する指標として、賃貸不動産経営者に大きく貢献してきました。
しかし、デッドクロスは「年間の減価償却費」と「年間の元本返済額」という二つの数字だけに注目するため、賃貸経営全体の健全性を見落としがちです。
その結果、「キャッシュフローを改善する」という根本的な目的を忘れ、誤った対策に走る危険性があるのです。
安全性示す「リリーフクロス」
そこで私が独自に考案したのが「リリーフクロス」という指標です。「リリーフ」という名のとおり、経営の安全性を判断する際の救世主となります。
リリーフクロスは、次の二つの数値の推移を比較します。
● 借入金の残債(年々減少する)
● 返済前売却保有累計(基本的に年々増加する)
「返済前売却保有累計」とは、
・これまでの保有期間中の手残り累計
・現時点で売却した場合の売却金額(諸費用・税金控除後) の金額を合計したものです。ただし、売却金額は借入金残債の返済前の金額を用います。借入金の残債と見比べるためです。
リリーフクロスが示すもの
借入金残債は返済により年々減少します。一方で、返済前売却保有累計は物件価格が多少下落しても、毎年の手残りがプラスである限りは増加していきます。
この二つのラインが交差(クロス)する点がリリーフクロスです。このクロスポイントを超えると、以下のことがいえます。
・いつ売却しても借入金を完済できる状態
・不動産経営をマイナスにならずに終了できる
・経営として安全圏に入った
つまり、リリーフクロスを達成すれば、その物件は「逃げ道が確保された安全な経営状態」となるのです。

デッドクロスとの使い分け
デッドクロスの状態になっても、リリーフクロスを達成しているならば、慌てる必要はありません。なぜなら、いつでも物件を売却してデッドクロスから脱出できることがわかっているからです。この安心感があれば、さらに投資を拡大させていくのか、あるいは現状の資産を守っていくのか、判断することが可能になります。
デッドクロスは重要な指標ですが、数字に振り回されないように、リリーフクロスの指標も見ながら経営判断をしてください。
【解説】
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年12月号掲載)






