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大阪市が特区民泊の新規受け付け停止へ
既存施設への対応も強化
大阪市は、国家戦略特別区域法に基づく特例、いわゆる「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)」の新規申請の受け付けを、当面停止する方針を9月30日に固めた。騒音やごみなどに関する近隣住民からの苦情が相次いでいることへの対応によるもので、一定の周知期間を設けたうえで市内全域で実施する。大阪市の横山英幸市長は、監視体制や制度改正が不十分な現状を指摘。まずは申請受け付けの停止を優先し、必要な対策を早急に講じる考えを示した。
特区民泊は、主に海外からの観光客向けに宿泊施設を提供する事業。宿泊施設の開業規制が緩和されているため参入しやすく、利益を上げやすいとされる。大阪市では7月末時点で6696施設が認定されており、全国の94%を占めている。一方で、施設の急増に伴いトラブルも増加し、2024年度の苦情件数は399件に上っている。
今後は、既存施設への指導も強化する。業務停止命令や認定取り消しに至る手順を明確化し、違反事業者への指導や処分を徹底する。また「(仮称)迷惑民泊根絶チーム」を保健所に設置し、苦情発生の未然防止に向けた指導体制も強化する方針だ。
さらに市は、自治体の判断で管理事務所の設置義務化などの規制が可能となるよう、国に法改正を要望する。特に海外に拠点置く事業者に対しては、国内代行事業者への業務委託の義務付けと、行政による指導権限の明文化を求める考えだ。
大阪市の民泊事情に詳しい加藤薫オーナー(兵庫県伊丹市)は「大阪の特区民泊は、観光や地域経済に大きく貢献しています。健全に運営する事業者が不利益を受けないよう、実態に即したバランスの取れた対応を期待しています」と話す。
国家戦略特区に指定された地域かつ特区民泊条例を制定している自治体内で、住宅を活用して宿泊施設を提供する事業。一般的な民泊は営業日数の上限があるのに対し特区民泊にはなく、年間を通して営業することが可能。ただし最低宿泊日数2泊3日、日本語以外の1カ国語以上の言語での対応が必要などといった要件がある。
(2025年12月号掲載)






