<<区分所有法改正のポイント>>
2025年5月に建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)の改正が行われ、26年4月1日から施行される。今回は、区分マンションを所有して賃貸に出しているオーナーにとって必要となる知識を、鳥飼総合法律事務所(東京都千代田区)の小杉太一弁護士が解説する。
改正に至る背景
国民の1割以上が居住しているマンション。国土交通省が公表した「令和5年度マンション総合調査」によれば、築40年以上の高経年マンションが全体の2割を占め、そのうち世帯主が70歳以上の住戸は5割以上となっている。マンションの高齢化が進み、建て替えの必要があるマンションも今後大きく増加する見通しだ。
しかし、例えば老朽化による外壁の剥落などの危険な状態が生じていても、高齢化や所有者不明などにより区分所有者が集会に参加できず、集会の決議が成立しないため、対処できない事案が発生していることが問題となっている。
このような建物と居住者の「二つの老い」に対応するため、区分所有法が改正された。改正の内容は多岐にわたるが、ポイントは、建物の管理と今後の再生をより円滑に行うための変更だということだ。今回は、決議の円滑化や、所有者不明・管理不全の専有・共用部分についての管理制度の制定、建て替えを進める新たなルールの制定などを例に挙げて説明する。
POINT1 決議が成立しやすくなる
集会の決議において、区分所有者が不明またはその所在を知ることができない場合は、改正前の区分所有法(以下、旧法)ではその議決権は行使されないため、反対として扱われていた。そのため決議が成立せず、日常の管理運営などが滞ることがあった。
しかし、改正後の区分所有法(以下、新法)では、裁判所の手続きを経れば、それらの議決権をすべての集会の決議から除外することができる(図1参照)。またこの場合、集会の招集通知も不要となる。

集会の決議の要件については①普通決議は「出席した区分所有者およびその議決権の過半数による決議」に、②規約変更など一部の特別決議は「区分所有者およびその議決権の過半数が出席し、各4分の3以上などの多数による決議」に、それぞれ要件が緩和される。なお招集通知にはこれまでの記載事項に加え、すべての議案で議案の要領を記載しなければならない。また通知から集会の開催日までは、1週間以上の期間が必要になる。
POINT2 管理人を選任し運営を行う
所有者不明や管理が行き届いていない不動産は、放置され周辺に悪影響を生じさせたり、利活用を妨げたりすることが指摘されている。そのため土地と建物については、23年4月1日に施行された改正民法により、財産管理制度が新設された。
そして新法では、この改正民法を参考に①区分所有者の所在等が不明の場合②専有部分や共用部分の管理が不適当で他人の権利などが侵害される(恐れがある)場合で、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、裁判所が管理人を選任し、その管理人が当該専有部分や共用部分を管理することができるようになる。
POINT3 建て替えを円滑に進める
旧法では、建物の建て替えの決議において要件が厳しく、区分所有者および議決権の各5分の4以上の決議を得なければならなかった。これがマンションが老朽化していても、建て替えが促進されない原因の一つになっている。
新法では、地震や火災に対する基準に適合しないときなどの一定の事由が存在する場合には、各4分の3以上の多数の決議により建て替えができるようになり、決議要件が緩和される。
また建て替えの際にハードルの一つになっていたのが、マンション専有部分を第三者に賃貸している場合の賃借人との契約だ。旧法では、建て替え決議が成立しても、当該専有部分の区分所有者(賃貸人)と賃借人との賃貸借契約は終了せず、建て替えの支障となることがあった。
新法では、建て替え決議が成立した場合には、当該専有部分の区分所有者らが賃借人に対して賃貸借の終了請求を行うことで、請求があった日から6カ月を経過すると契約を終了させることができるようになる。ただし、賃借人保護のため、賃借人に対して通常生ずる損失の補償金を支払う必要がある。(図2参照)
またさまざまな手法で老朽化マンションの再生を進めるため、建て替えのほか、建物の更新(一棟リノベーション)や建物・敷地の売却、建物の取り壊しと敷地の売却、建物の取り壊しが決議により可能になる。

規約の改正と注意点
新法は26年4月1日(以下、施行日)から施行され、すべての区分所有建物に適用される。ただし、これより前に招集手続きが開始された集会や、旧法の規定により生じた効力については、旧法が適用される。
規約については、旧法の規定により定められた事項で新法に抵触するものは、施行日から無効となる。そのため、現在の規約が新法に抵触するか否かを確認し、抵触する場合は規約の改正が望ましいだろう。なお24年6月7日改正のマンション標準管理規約は新法に抵触する事項が含まれている点に注意が必要だ。同規約を採用している場合、25年10月17日改正のマンション標準管理規約を参考に改正することが考えられる。
そして、規約を改正する場合、集会の招集手続きの開始が施行日より前の場合は旧法が、同日以降の場合は新法が適用される。施行日より前に決議をする場合は、施行日から改正後の規約の効力が発生することを併せて決議することになる。
鳥飼総合法律事務所(東京都千代田区)
小杉太一 弁護士

同志社大学大学院司法研究科法務専攻修了。第二東京弁護士会マンション管理研究会代表幹事。不動産取引におけるスキーム検討や契約書作成を中心に、不動産に関する法律問題や訴訟を扱う。
(2026年2月号掲載)






