INTERVIEW 不動産市場で光るプレーヤー:コンセプト賃貸

土地活用賃貸住宅

コンセプト賃貸で入居率99%

 1987年の設立以来蓄積してきたノウハウを基に、木造アパートの企画から、設計、施工、販売、賃貸管理まで手がける愛和(福岡市)。12の異なるコンセプトを武器に供給数を伸ばし、アパートの累計供給数は386棟2773戸(2024年11月7日時点)を誇る。24年11月期は前期比10億円超の増収となる年商40億円を見込む。近年は福岡県だけでなく、東京都や愛知県にも進出。ますます拡大する同社の阿部大輔社長に、今後の展望について話を聞いた。

愛和(福岡市)
阿部大輔社長(44)

投資用アパートを約30年販売

 投資家向けのアパートの販売を30年近く手がけている愛和。本社がある福岡県だけでなく、名古屋市や関東圏も営業エリアを広げ、供給数を増やしている。投資用アパートの年間販売棟数は30棟ほどで、年商も右肩上がりだ。

 「販売はおかげさまで好調です。売り上げは22年が20億円、23年が28億円、そして今期24年が40億円を見込んでいます」(阿部社長)

 23年と比べ10億円を超える増収となる。投資用アパートは、収益不動産情報サイトの「健美家」と「楽待」に物件情報を掲載して販売している。土地代は地域によって異なるものの、目安としては40坪くらいの敷地で建築費が3000万円で、表面利回りは6・5%前後。年収600万円以上の人が主な購入層となっている。

12のプランで差別化を図る

 愛和の販売数が伸びている理由の一つは、12の異なるコンセプトの賃貸住宅を展開していることにある。投資用アパートの販売を始めた当初は「ピュアシリーズ」一つだけだったが、09年から「クレオ」「アンピオ」「ヴァッシオ」という三つのプランを投入。そこからスキップフロアなどデザインにこだわるようになった。その後、徐々にプランを増やしていき、現在の12プランを展開するに至った。

 ここまでプランが増えた理由は、同業他社との差別化と、近くにある同社が販売した物件と競合しないことが目的だった。価格競争が予測される若年層向けの大量生産アパートではなく、入居者の好みに合わせた個性ある物件を開発することで長期入居につなげ、資産価値を高める目的もある。

 「人気があるのは、クローゼットが充実している『衣裳いしょう部屋プラン』、コーヒーを部屋でゆっくり飲める空間が特徴の『フィーカプラン』、カウンターキッチンが中心の『デリカプラン』などです」(阿部社長)

 その中でも、同社の女性社員の「好きな服を着ていない間も見せて飾りたい」という声から生まれた衣裳部屋プランは、女性からの支持が高い。玄関を開けるとディスプレークローゼットに囲まれた空間が広がるプランで、内見時のインパクトが大きく、決まりやすいのだという。

▲愛和のコンセプト賃貸で人気の衣裳部屋プラン

 また最近は新しく「ゲーマープラン」が登場した。このプランのポイントは四つ。①「ロフトベッド」と「プロゲーマーおすすめのゲーミングデスク」を標準設置②ゲーマーのための配線収納とコンセントを完備③防音システムとインターネット回線増強で快適プレーが可能④ゲーミングデスク周りには暗めのアクセントクロスを採用し、好きなネオンライトを配置してオリジナル空間を演出することが可能となっている。

▲23年にリリースしたゲーマープラン

管理物件は2700戸

 若者のニーズを捉えて反映しているだけでなく、社員が楽しい雰囲気の中で企画しているという同社のプラン。「あなたらしい人生に、喜びと価値を。」を理念とする同社では、受託する管理物件が2700戸ほどあり、その入居率は99%を実現している。

 08年に入社した阿部社長は、これまでにマーケティングに注力してきた。リーマン・ショック後の09年ごろに購入の問い合わせが激減したことを受け、投資家が困っていることに対応すれば、その状況が改善するのではないかと思ったからだ。そこで、当時、社長だった会長に提案し「買い方を教えます」というセミナーを行うことにした。当時はそうしたセミナーを行う会社は多くなかったため集客しやすく、顧客へとつながっていったのだという。それと同時に、入居率が上がるアパートについても研究し、企画していった。

 不動産業界は、建物の供給数を増やすことで発展してきた。しかし、阿部社長は「今後は供給数というよりも、入居者に対する生活サポートなどのソフトサービスを充実させていきたいと思っています」と販売したさらにその先を見つめている。

(2025年1月号掲載)

一覧に戻る

購読料金プランについて