INTERVIEW 不動産市場で光るプレーヤー:AIを駆使

土地活用パーキング

AIを駆使して駐車場市場を活性化

駐車場市場においてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するランディット(東京都港区)は駐車場情報を一元化し、駐停車スペースの貸し借りに関わるすべての業務がスムーズに行える環境づくりに注力する。2021年に会社を設立し、年商25億円。自動車や自転車、スクーターなどの移動手段を共有して利用するシェアモビリティーや自動車の自動運転に注目が集まる中、今後駐車場市場はどのように変わるのか。藤林謙太CEOに同社の事業と今後の展開について聞いた。

ランディット(東京都港区)
藤林謙太CEO(37)

事業者の駐車場利用に着目

 わが国の駐車場市場規模は約1兆円前後といわれている。自動車を所有しない傾向が高まっているが、駐車場の利用は減少していないという。事業用の駐車場ニーズが増大しているためだ。

 そんな事業用に着目して駐車場利用のマッチングサービスを始めたのがランディットだ。同社が21年から提供する「atPORT(アットポート)」は、1日以上駐車場を利用したい人が対象。具体的には、ゼネコン、工務店など建設事業者、物流事業者、不動産事業者、マイクロモビリティー事業者、そして個人ユーザーの中長期ニーズに対応する。atPORTは依頼から見積もり確認、契約、利用、駐車場の情報共有までワンストップで完結できるソフトウエアだ。

 同社の強みは、衛星、クラウドカメラ、超音波、インターネット上にある情報をすべてリアルタイムデータにAI(人工知能)を活用して、駐車場のみならず、駐停車できる車室単位の情報を集めていることにある。衛星の活用によって情報の精度も高く、駐車場のサイズは30〜80㎝単位でわかるため、例えばその駐車場に2トン車が入れるかどうか、入出庫のしやすさなどを把握できるのだという。

 それと同時に建設車両の駐車場ニーズを踏まえて、そのエリア内にある駐車場をサブリースで同社が一定期間押さえ、それを細分化して複数の工事会社に貸し出すこともできる。「要は駐車場情報を、簡単に、素早く、安く提供することを目指しています」(藤林CEO)

 ただ、衛星ですべてを見通せるわけではないため、高いクオリティーを維持することは簡単ではないだろう。そこで同社は、例えば駐車場を1件借りたいという依頼が来た場合、それに伴って10件の駐車場の状況を、現地で確認する部隊を内製化している。アナログな調査によって、より正確なオーナー情報と駐車場情報を把握している。

 また登記簿で土地情報を確認するほか、名義や価格などの変更も含めて、詳細を明らかにする。100件の依頼があれば1000件、1万件の依頼があれば10万件の駐車場の情報が更新される。同社では現在、事業開始から3年で年に約10万件程度の依頼を受けているため、少なくとも年間約100万件の駐車場情報が更新される仕組みを持ち、毎月取り扱い件数は拡大し続けている。

所有者の直接募集が可能

 同社は24年から「SYNC PORT(シンクポート)」というサービスも展開している。同サービスは駐車場の情報を登録するだけで、初期費用・月額費用無料で駐車場の情報サイトを自動作成・公開し、集客、申込受付、審査、契約手続き、賃料保証までする。これによって、インターネットで駐車場を探している人に対して、直接情報を提供することが可能になる。例えば、集客する手段が現地の立て看板のみの月極駐車場で、長い間埋まらない区画があって困っているオーナーに適している。

 SYNC PORTは、at PORTとも連動していて、双方で集客が可能だ。

多様な事業経験から着想

 「とにかく、パズルのように車とスペースが組み合わさって、そこに現金が介在しない形をつくりたいです」と話す藤林CEOは多様な事業に携わってきた経験が、現ビジネスに生きているという。

 大学卒業後に三菱商事(東京都千代田区)に就職した藤林CEOは、建機レンタルを取り扱っていたため、建設現場では駐車場が不可欠であると実感。その後、海外で手がけたビル管理では、駐車場運営会社が安定的な利益を得ていることを知った。

 さらに、自動車事業でモビリティーの将来像に関わった後、政府系投資ファンドで携わった洋上風力発電の事業では、需給のバランスが重要な要素を占めることを体感。最後に外資系リテール企業では小売業が、顧客がいつ来店して、どのように店内を巡り、何を買って、何時に店舗を後にするのかという情報をビーコンやカメラを駆使することで取得していることを実感した。

 こうしてこれまで携わってきたすべてのビジネスの共通項がつながり、結実したのがランディットのビジネスなのだという。
 今後もコインパーキング、月極駐車場、一般向けに貸し出されていないような空きスペース、商業施設の付帯駐車場、パーキングメーター、この5種類に対してアプローチしていきたい」と藤林CEOは話す。

(2025年 3月号掲載)

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