【特集】狭小地・変形地の活用法[後編]②:ウナギの寝床

土地活用賃貸住宅

狭小地や変形地での賃貸物件の新築事例を紹介する。今回は限られた敷地内でさまざまな規制をかわして延べ床面積や専有面積を確保する例が見られた。

事例2
間口が狭いウナギの寝床 接道広げ延べ床面積370㎡増に成功

環境建築設計(東京都渋谷区) 宮坂正寛代表取締役(79) 

 環境建築設計(東京都渋谷区)によって設計された「TOKIO(トキオ)久米川タワー」は、西武鉄道新宿線久米川駅から徒歩1分の場所に、19年1月に完成した。

 元々、同所に立っていた鉄骨造3階建てのビルで学習塾を経営していた家主が、建て替えを依頼したことから動き出した計画だ。敷地は面積が約279㎡で、接道部分が約8m、奥行きが26mと細長く、いわゆる「ウナギの寝床」の形をしている。それに加えて旗ざお地でもあった。

 また当初は接道部分が数㎝の差で8mに届かないことが判明し、東京都建築安全条例によって延べ床面積で1000㎡までの建物しか建てることができなかった。

▲TOKIO久米川タワーの外観

 そのような状況の下、実際に完成した建物は13階建てで、1〜2階に家主が経営する学習塾が入り、3階から上が1K・42戸の共同住宅となっている。延べ床面積は約1371㎡、最寄り駅からも近い人気物件だ。

 設計にあたっては、東京都と協議し、旗ざおの形のうち、前面道路から死角となる敷地には建物は建てないことにした。

 一方、隣接地との間に約45㎝の隙間があった。同社の宮坂正寛代表取締役・一級建築士は、死角で建物を建てない敷地と、隣接地との約45㎝の隙間のうち約25㎝の部分とを2対1の割合で交換することを隣の土地所有者に提案。交渉の結果、交換が実現した。

 これにより、接道部分が8mを超えることになり、延べ床面積で1300㎡までの建築が可能となった。1000㎡までだと8~9階程度までしか建てることができなかったところを、13階までフロア数を増やすことができたのだ。

 また建物の裏側(正面と反対側)は西武鉄道新宿線の線路となっているため、ぎりぎりまで建物を線路側へ寄せて、前面の道路から離した。これにより、道路斜線制限をかわした。

▲可動式の家具も取り入れた同物件の室内 

 このほか、各戸の専有面積が22・6~23・51㎡と決して広くないため、できるだけ居室面積を取れるように可動式の家具を設置するなどの工夫も行った。

 結果的に13階建ての建物で40戸以上の住戸数も実現できたので、宮坂代表取締役も「家主は相当満足してくれたと聞いています」と話す。

(2025年 4月号掲載)
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