事業用不動産の原状回復は具体的な線引きがポイント

土地活用その他建物

【特集】住宅とは違う事業用不動産による上手な土地活用④

原状回復の対応
具体的な線引きを契約で規定する

 建物を貸す場合、居住用賃貸では経年劣化による損耗の原状回復費用は家主の負担となるが、事業用では契約によってテナントが負担する場合もある。ただし、原状回復における認識の違いから家主とテナントの間でもめるケースも多いので注意が必要だ。
 事業用賃貸には、残置物を一切残さずに建物の骨組みの状態で貸すもの(スケルトン)と、以前のテナントが使用した内装を残した状態で貸すもの、さらには業務用設備も残したまま貸すもの(居抜き)などがある。
 例えばスケルトンといいながら、壁や天井まで壊すのかどうか、配管まで撤去するのかどうかなど、双方の間で食い違いが生じることがあるのだ。
 また内装を残して貸す場合や居抜きの場合、特に何度もテナントが入れ替わっていると、設備が繰り返し使用されてどの状態が「原状」だったか分からなくなってしまうことも。このため「ここまでが原状回復」だとする線引きが難しくなるのだ。

 

写真を撮って残しておく

 対策としては、契約書で原状回復の線引きについて詳しく触れておくことだ。
 波戸岡弁護士は「『原状回復とは〇〇〇〇のことを示す』といったように明記するといいです」と話す。
 たとえスケルトンによる賃貸であっても、単に「スケルトンで返す」ではなく、どこまでをスケルトンとするのかを定義するといい。
 そのほかの効果的な対策としては、入居時に物件の内装、設備の写真を数多く撮影しておくことが挙げられる。居住用のときと同様に、退去する際に写真によって入居時点の設備の状態を明確に再現することができ、トラブルの予防にもなる。
 これらに加えて、波戸岡弁護士によれば、家主が日頃からテナントと良好な関係を築くことが大切になるという。原状回復についてはテナントと話し合いになることが多いため、関係性が良いと対話がスムーズに進むからだ。

 

■原状回復トラブル防止のポイント
○どこまでが原状回復か線引きを決める
○スケルトンの場合も定義をはっきりとする
○契約時の設備の状態を再現するために写真を撮っておく
○テナントと良好な関係を築く

 

トレンド

時代の変化に応じたテナント

★高齢化の進行 → 整骨院・介護系施設(老人ホーム) 
★女性の社会進出 → 保育園・幼児教室・深夜営業のスーパー
★健康志向 → フィットネス・健康食品・自然食レストラン
★社外勤務の増加 → シェアオフィス・貸し会議室・インターネットカフェ
★ペットブーム → 動物病院・ペットサロン・ペットショップ
★流行の美容 → ネイルサロン・美容室

※市萬の西島社長によれば、行政の補助金制度が設けられた分野はその後流行する傾向がある
※市萬への取材ならびに同社提供資料を基に地主と家主で作成

 

(2025年7月号掲載)
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