物件を所有する資産管理会社は分社化して8期目

土地活用店舗

老舗企業と不動産:前編
永和工芸(大阪市)

収益安定の不動産事業を伸ばす 金属塗装事業を支える柱

永和工芸(大阪市)は、金属塗装事業をメインに近年は不動産事業やカフェ経営などで多角化を進めている。特に不動産事業は将来、グループの事業の柱にしようと強化を図っている。「本業の金属塗装に戦略投資していくためにも、安定したキャッシュを生み出す不動産事業に力を入れていく」と松本悦典社長は話す。

永和工芸 (大阪市)
松本悦典社長(53)

金属塗装事業を行う永和工芸の3代目。2010年に社長就任。金属塗装事業では、建築金物関係、車両関係、工具関係、機械部品関係、医療・健康器具関係、電気機器を得意とする。金属塗装事業のほか、カフェ事業や不動産事業も展開。

複数事業の必要性を感じ不動産、カフェなどを行う

 1958年創業、大阪市平野区で金属塗装事業を行う永和工芸。同社は創業67年目になる。松本社長の祖父が創業したもので、松本社長で3代目となる。二輪車のバックミラーや床下収納用の取っ手の塗装などの大ロットのものから、1点ものとなるサンプル商品まで、自社工場で請け負える吹き付け塗装を幅広く行っている。
「基本的には、すでにつながりのある会社から建築用の金物や機械の部品などの注文を受けることが多いですが、最近ではオルゴールやペット用の祭壇など変わった依頼も受けています」と松本社長は話す。
 永和工芸の現在の経営状況は安定している。だが、松本社長は、本業を伸ばすだけでなく、本業以外に複数の事業の柱が必要だと考えた。そのため、同社ではカフェ事業や不動産事業の展開を始めた。

多角化のためカフェを経営 独立採算に向けて分社化

 現在、永和工芸の敷地の一角には「Cafe SaCueva(カフェサクエバ)」がある。このカフェも事業の多角化の試みの一つだ。工場の使わなくなった部分をリノベーションした。クラウドファンディングで資金を募り、DIYを中心に改装、19年にオープンした。


 コンセプトは「工場を生かすこと」。金属塗装の現場が体感でき、インダストリアル感、ビンテージ感のある居心地の良いカフェとなっている。日中はランチ営業、夜間はレンタルスペースとしての営業で、イベントやワークショップなどにも自由に活用することができる。松本社長自身もイベントを積極的に開催している。例えば、24年11月の著名人を招いたイベントは大いに盛り上がったという。
 当初は、このカフェも永和工芸の中の一部門としての位置付けだったが、カフェだけで経営が成り立つようにしていきたいと考えた。現在は別会社となっており、社員の一人に実質的な経営を任せている。
 現在、グループは本体となる永和工芸のほかに、金属塗装には欠かせない洗浄を行う会社、前述したカフェを運営する会社、そして不動産を所有する資産管理会社がある。資産管理会社には、ほか3社分の経理や人事労務を担う機能も持たせ、永和工芸と洗浄の会社以外の2社は、松本社長が就任後に始めた事業を手がけている。
 4社合わせて社員数は約20人、売上高は1億5000万~1億6000万円ほどだという。
 松本社長によると「カフェ自体は、永和工芸の工場の一角を改装し、19年から営業しています。分社化したのは、いずれそれぞれの事業だけで経営が成り立つようにしたいと考えたからです。資産管理会社は8期目、カフェを経営する会社は分社化して3期目になります」とのことだ。

会社概要
社名   永和工芸
創業   1958年
資本金  1000万円
従業員  20人
社長   松本悦典
事業内容 金属塗装、塗装前処理、亜鉛めっきおよび後処理、塗膜剥離を行う。得意分野は建築用金物、車両関連、工具、機械部品関係、医療・健康器具、電気機器

(2025年7月号掲載)
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