不動産事業を強化し経営の安定化を図る

土地活用店舗

老舗企業と不動産:後編
永和工芸(大阪市)

資産管理会社で物件所有 不動産事業は月商160万円

 不動産事業は松本社長が40歳の頃個人的に始めたもので、現在はグループの1社である資産管理会社が物件を所有している。資産管理会社はもともと個人の所得税が増えてきたのをきっかけに法人化したプライベートカンパニーだった。途中で不動産事業の安定性に気付き、本業と一つのグループとして経営することにした。
 現在所有する賃貸住宅は戸建て9戸とアパート1棟(4戸)。このほか、約200坪の本社工場と約80坪の第2工場もこの資産管理会社で所有している。資産管理会社が得る家賃は、賃貸住宅が月40万円、本社工場が月80万円、第2工場が月40万円ほど。トータルで月160万円になる。
 所有物件が立つエリアは、兵庫県川西市、神戸市、大阪市、奈良市と広範囲だが、2時間ほどかければ自分で出向くことのできる範囲内で購入すると決めている。築古を購入し、修繕を施して賃貸に出す。工場の一角をカフェに改装した際の経験を生かし、大部分は自らリフォーム。「特に外壁塗料は専門ではないのですが、塗料を使うということは共通しています」(松本社長)。自社でリフォームを行うと結果的にコストカットできることから、築古物件を安く購入して収益を上げている。


 「不動産を買い始めた当初から築40年ほどの物件を購入しています。売却も考えてはいますが今は築50年になっているものも所有しています」と松本社長は語る。
 購入金額は大阪市平野区の戸建てが200万円、川西市の戸建てが300万円、奈良市の物件が400万円ほどだった。購入後に修繕を行うので、その費用と購入金額の合計が500万円内になるような物件を探すのだという。
 2024年の年間売り上げは約2000万円と、まだまだ本業には遠く及ばない。しかし、松本社長はこれからさらに不動産事業を伸ばしていきたいと考えている。金属塗装事業は景気に左右され、利益も大きくないのに対し、不動産事業は安定した家賃収入を実現できるからだ。

▲After:落ち着いたグレーに外層塗装

売り上げの9割は金属塗装関連 信頼得て生き残る方針

 洗浄を行う会社の売り上げも含め、本業である金属塗装関連の年商は全体の90%以上となっている。
金属塗装業界において、売り上げや従業員規模で見ると同社は中堅クラスだという。
 「手作業で行っているのか工場なのか、工場の規模やどういった機材を所有しているのかで塗装できるものが決まってきます。同業他社といってもある程度すみ分けができている業界です」(松本社長)
 また金属塗装にはエアスプレーや塗料、コンプレッサーと吸い込みブース、さらに乾燥炉などが必要で、初期投資がかかる。そのため新規参入は多くない。爆発的な業績の伸びは期待できないものの、松本社長が本業に対して感じるのは、新規参入が少ない以上、信頼を得られれば仕事が途切れることはないということだ。

不動産事業を強化 財務力を高め親会社に

 金属塗装、カフェ、不動産と異なる事業を手がけていく中で、当初は売り上げが大きい金属塗装の会社を主として本社のようにしようとしていた松本社長。収入が安定している会社のほうが財務が安定するため、現在は、不動産事業の会社を親会社として経営していきたいと考えている。
親会社の財務力を高めるという意味でも、さらに不動産を買い増してより経営を安定させていきたいという。
 不動産事業における10年後の目標は、月商1000万円だ。
 松本社長は「社員は今20人。人件費が年間1億円強だとすると、月商が1000万円であれば不動産事業だけで社員の生活を支えることができます。その金額を一つの目安としてこつこつ不動産を取得していきたいです」と話す。
現状の所有物件は築古戸建てが多いため、利回りは高くとも手残りは多くない、これから取得していく物件としては、アパートやマンションに目を向けていくことも考えているという。
 また10年後には工場設備への借り入れの返済が終わる見込みだ。
 「そうすると会社にキャッシュも増えます。金属塗装事業の収益を戦略投資することも可能になるでしょう。どの事業を伸ばしていくか計画的に進めていきたいです」(松本社長)

 
【沿革】
1958年:祖父・音松氏が永和塗装工業所を創業
1963年:株式会社化し、永和工芸となる
1993年:父・光彦氏が社長に就任
2010年:悦典氏が社長に就任
2012年:悦典氏が不動産投資を始める
2017年:不動産事業を行う会社を資産管理会社にする
2019年:カフェ事業を始める
2222年:カフェを経営する会社を分社化

(2025年7月号掲載)
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