<<注目の新築プロジェクト>>
IoT化でセキュリティー解除が便利に
間口約7mの敷地に10階建て25戸建築
Taiwa Arun Yodoyabashi(大阪市)
- 進和建設工業(堺市) 西田芳明会長
- 泰和実業(大阪市) 小野繁伸社長
縦長の長方形で、いわゆる「うなぎの寝床」のような敷地に最新のIoT設備を備えた新築マンションが誕生した。大阪メトロ御堂筋線淀屋橋駅から徒歩5分の場所に立つ「Taiwa Arun Yodoyabashi(タイワアルンヨドヤバシ)」だ。RC造10階建てで、賃貸がファミリー向け12戸、単身者向け11戸、オーナー利用1戸、テナントの合計25戸から成る。
- ▲間口約7m、奥行き約40mの難しい土地に新築
- ▲メゾネットタイプの部屋の階段は踏み込み板のないオープンタイプで室内の採光性を確保している
最大の特徴であるIoT設備はすべて、くじらリアルエステートテック(大阪市)の製品を採用。ICカード、パスコード、顔認証で共有エントランスのオートロックの解錠が可能となるほか、宅配ボックスや郵便受け、各住戸のドアにもスマートシステムを導入している。
「家族が住んでいるマンションで不足しているIoT設備を、前職のIT技術を活かし、新築物件に導入しました」と話すのは、同物件のオーナーである泰和実業(大阪市)の小野繁伸社長。柱や梁が見えないようにしたのは、自身のマンション選びからのこだわり。
- ▲各住戸のスマートロックは入居者の安全を守るだけでなく管理もしやすくする
- ▲ICカード、パスコード、専用スマートフォン向けアプリで解錠できる宅配ボックス
ファミリー向け1SLDKではバルコニーにシンクを設置したり、別の事業で知り合ったタイの企業にげた箱をタイから輸入して設置。決まりにくい1階の北側住戸は専用庭付きメゾネットタイプにした。そのほか、コンクリートの劣化を抑える塗料の使用や、後付けが難しいエアコンの配管を全部屋に通すなど、入居者の利便性だけでなく将来のコストダウンも意識した。「兵庫県芦屋市に所有する2棟の賃貸マンションで大規模修繕を実施した経験を生かしました」(小野社長)
- ▲げた箱はタイの木工家具メーカーに依頼した
- ▲梁や柱が気にならず空間がより広く感じられる
もともと同地に立っていた築50年を超す4階建てのテナントビルは杭のないベタ基礎構造であり、2019年に実施した耐震診断で新耐震基準を満たしていなかったことから建て替えを検討。翌年に大口テナントの退去通知を受けて建て替えを決断した。小野社長は、ローコストマンションの建築に強みを持つ進和建設工業(堺市)に建て替えを依頼した。「オーナーは勉強熱心で、当社が主催する勉強会にも参加いただいていました」(西田芳明会長)
対象となる敷地は間口が6・75m、奥行きは38・75mの細長い敷地だ。そのため、創業57年で、これまで740棟を超えるマンション建築の実績がある進和建設工業だからこそ、間口の狭さから型枠を外す難しさも乗り越えた。また地型の特長を生かし、共用廊下には自転車を置くようにするなど、スペースを無駄にしない工夫を施した。

(2025年10月号掲載)