多様な空間をトランクルームで収益化 ーアンビシャス

土地活用トランクルーム

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地方の変形地からデッドスペースまで、
多様な空間をトランクルームで収益化

アンビシャス

成長が続く市場として注目されるトランクルーム。新型コロナウイルス禍を経ても拡大基調にあり、年率10%程度の成長を続けているといわれる。こうした中、トランクルーム事業を手がけるアンビシャス(大阪市)は屋内型トランクルーム「収納PiT(ピット)」を通じて、従来は活用が難しいとされてきた土地や空間の収益化を提案している。

アンビシャス(大阪市)
清水昭安取締役

屋内型に特化 安全で快適な保管環境

 収納PiTは、屋内型に特化したトランクルームだ。トランクルームには大きく分けて屋外型と屋内型がある。屋外型はロードサイドや空き地にコンテナを設置する形態で、工具や資材の保管に使われることが多い。一方の屋内型はビルや商業施設を活用して屋内に設置されたトランクルームだ。セキュリティーや空調が整えられた環境であることが多い。

 収納PiTでは、トランクルーム周辺のニーズ分析により区画分けを実施。0・5畳から7畳まで多彩な区画を用意する。個人利用では衣類や季節家電、趣味の道具など、法人利用では在庫や書類の保管など幅広いニーズに応えている。利用者の7割が個人だ。

▲収納PiTの内装

FC運営や土地活用 多様なビジネスモデル

 矢野経済研究所(東京都中野区)がまとめた市場関連データによると、2024年度における全国のトランクルーム店舗数は1万6000で、15年の8500から約2倍に伸びた。ユニット数(室数)は67万と、年10%のペースで成長を続けている。

 アンビシャスは、収納PiTを通して土地や空きテナントの収益化を提案する。事業モデルは、オーナーの状況に応じて柔軟に設計されている。同社が既存の建物の一画をオーナーから借り上げて直営したり、別の投資家がその物件でフランチャイズを行ったりする形式や、物件のオーナーが自身の物件でフランチャイズを行う形式もある。また同社が土地を取得し建物を建設して投資家に売却することもあれば、地主に建設を提案するケースもある。

 いずれのモデルにおいても最終的な運営は同社が担い、オーナーや投資家が煩雑な管理業務を抱えることはない。既存建物を活用する場合は、柱や構造に合わせて柔軟に区画設計を行うことが可能だ。

 初期投資費用は700万〜1000万円程度。トランクルームは利用者が入れ替わるたびに原状回復を行う必要もなく、大規模修繕や住宅設備の交換といった追加投資がほとんど発生しない。清水昭安取締役は「立ち上げ時は稼働率が低く、初年度は赤字になることもある。ただ、2年目以降に安定化し、3〜4年目には稼働率85%前後に達するケースが多い。トランクルームは利用者の継続率が高く、安定すれば高利回りを期待することができる」と話す。オーナー投資の場合、利回りが20%を超えることも多いという。利益を上げるまでは時間を要するものの、中長期的に見れば安定した収益源となり得るのがトランクルーム投資の魅力だ。

活用が難しい土地に強み 駅遠物件や変形地を活用

 トランクルームのメリットは、駅前の好立地に依存しない点だ。「駅から距離のある土地や変形地、柱の多い建物など、これまで活用が難しいとされてきた物件にこそ強みがある。間口が狭い土地や奥行きが深い区画など、通常の店舗や住宅としては使いにくい物件でも、区画を柔軟に調整できるトランクルームであれば十分に事業化が可能だ」(清水取締役)

▲ビルの1階部分にテナントとして店舗を構える

 実際に、商業施設においてコロナ禍により空いたバックヤードや倉庫区画をトランクルームへ転用した事例があるという。テナントスペースは飲食や体験型サービスなどで埋まっていても、裏の倉庫フロアは長らく空室というケースが少なくない。そこにトランクルームを導入すれば、施設側は本来収益を生まなかったスペースから安定した賃料収入を得られる。

創業20年、800店舗を運営 2年で1000店舗目標

 アンビシャスは05年に創業した。「志の高い人格者を造り、社会に貢献する」という理念を込めて社名を「アンビシャス」とした。創業者である田中正代表取締役会長は不動産や飲食、アミューズメント施設の開発で培った経験を生かし、当時まだ競合の少なかったトランクルーム事業に参入。屋外型でスタートし、11年には屋内型にシフトした。現在では店舗の大半が屋内型となっている。

 同社は、25年8月末時点で、全国約800店舗を展開しており、店舗数を拡大中だ。年間100店舗以上の出店を継続し、2年以内に1000店舗超を目指す。

 また同社は、23年より地方都市での出店にも力を入れている。今後も出店数の約半数は関東地方や関西地方以外での出店を進める計画だ。さらに物流との連携や短期利用といった新サービスを構想し、単なる保管スペースから生活とビジネスを支えるインフラへの進化を目標に掲げている。「トランクルーム市場は拡大基調にあり、今後も需要は高まると見込まれる。日本市場は未開拓で拡大の余地が非常に大きい。所有する土地や物件を諦めていた人にこそ注目してほしい」(清水取締役)

▲一棟すべてがトランクルームとなっているタイプ

(2025年11月号掲載)

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