<<新たな環境型投資手法>>
“再エネ”ニーズ拡大で注目される「蓄電所」による土地活用
太陽光発電所による土地活用は全国に広がっている。今それに次ぐ新たなエネルギー関連の土地活用ビジネスとして注目されているのが「蓄電所」の建設・運用だ。蓄電所は、再生可能エネルギーの有効活用と収益化の確立などの理由から増えている。
エコスマイル
(名古屋市)
東田顕史社長
収益性と環境貢献を兼ね備えた投資先として、太陽光発電所を保有するオーナーは多い。だが、自然を相手にする太陽光発電は日照不足や自然災害のリスクを伴う。また収益規模を求めるには、一定程度の広さを有する適切な用地を確保しなければならないという難しさもある。
そうした中で近年、新たな環境型投資手法として注目されているのが「系統用蓄電池」と呼ばれる蓄電所による土地活用だ。写真のように、ちょうどコンテナをイメージさせるのが蓄電池で、オーナーはこれを所有し、プロに運用を任せて収益を得る仕組みだ。すでに所有している土地での活用も可能だが、周辺の環境条件がより適した(※詳細は後述)立地を運営会社から紹介され、土地ごと投資するケースも多い。

電力の需給バランスを調整
そもそも蓄電所の役割とは何か。簡単にいえば、電力の発電に伴う需給バランスを調整するものと考えればわかりやすい。電力の使用量は日中と夜間、寒暖差、需要のピーク差などによって変動が大きい。一方で、発電による電力供給は波があり、特に太陽光発電や風力発電といった再エネによる発電は、天候状況などによって供給力に大きな変動を来してしまう。この変動を、蓄電池を使って調整するのが蓄電所の役割だ。
主に「卸電力」「容量」「需給調整」の三つの市場取引があり、各市場から報酬を得る。
社会環境適合性の高いビジネス
一つ目の「卸電力」は発電された電力の卸売市場での売買差益を得る取引だ。一般の人にはあまり知られていないが、国内の各発電所で発電された電力の約4割は、JEPXと呼ばれる一般社団法人日本卸電力取引所で売買されている。電力の需給調整が目的だが、蓄電所のオーナーはこの取引で差益を得ることができる。具体的には、夜間に需要が少なく安価な電力を蓄電池にためておき、需要が高まり価格が上がる昼間に放出する。この差額から必要経費を差し引いた分がオーナーの収益となる。
二つ目の「容量」は将来の安定的な電力容量の確保に貢献することで得られる報酬。そして三つ目の「需給調整」もやはり電力の安定につながるバランス調整に関わることで得られる対価だ。
系統用蓄電池の設計・調達・建設事業を行うエコスマイルの東田顕史社長はこう話す。
「系統用蓄電池事業のオーナーは、地域の電力の安定供給に貢献しながら、投資により収益を上げられます。その意味で極めて社会環境適合性の高いビジネスだといえます」

土地面積は300〜600坪
エコスマイルでは、投資家への蓄電所の販売と、地主からの用地取得の両軸で事業を展開している。同社が提供する蓄電池はパワーコンディショナー(変換器)が2メガワット、電気容量が8メガワットアワーの仕様が標準モデル。いわゆる〝ニッパチモデル〟で、必要とされる土地面積は300坪以上。最大では600坪まで対応可能だという。
立地条件については、太陽光発電とは異なり、日照条件は不要。発電をするわけではないからだ。その代わり、重量を伴う蓄電池を設置するため、地盤の強さが求められる。具体的には20トンの重量に耐えられる地盤が条件となる。蓄電池の搬入が可能な道路幅も必要だ。
さらに、騒音対策として、近接建物から最低50〜100m離れていること。30mしか離れていない場合は防音壁の設置が求められる。
また系統用蓄電池は電線に直接接続して電気を蓄電するため、電力会社の容量も確保しなければならない。
10〜20%の高い利回り
このように系統用蓄電池事業を行うにあたっては立地条件などの制約があるうえ、自治体によって規制の違いがあり、その確認も必要だ。だが、投資先としての最大のメリットは利回りの高さだろう。利回りは10%から20%になる場合もあるという。さらに、事業法人などが自社敷地内でこの事業を行った場合には、停電時に自社の施設に電力を供給することも可能になる。
その一方で系統用蓄電池のデメリットは投資額が高額なことだ。1法人や個人が敷地内全体の蓄電池を所有する「ワンオーナーモデル」の場合は、5億円以上となる。しかし、複数オーナーが蓄電池をユニット単位で購入する「分散投資家モデル」もある。この方法だと、1ユニットを数千万円単位で投資することが可能だという。
先行者メリットに期待
系統用蓄電池事業の運営においては、エコスマイルのような設計・調達・建設(EPC事業者と呼ぶ)のほかに、アグリゲーターと呼ばれる運用事業者の存在が重要な鍵を握っている。電力市場には、前述したような特有の報酬システムがあり、アグリゲーターは、運用においてその最適化を図る司令塔の役割を果たす。その意味で、優れたアグリゲーターの選定は、EPC事業者の責務でもあるという。
「系統用蓄電池事業で重要なのはアグリゲーターです。当社では全国に約120社あるアグリゲーターの中から、最適な企業を選定するように努めています」(東田社長)
蓄電所による土地活用事業は、太陽光発電などに比べて、まだビジネスとしての歴史が浅く、国や自治体の規制といった細かい部分が整っていない。そのため事業投資にあたっては専門家とよく相談する必要がある。その一方で、新しい投資ビジネスだからこそ、先行者メリットや将来に向けた成長可能性の高さが期待できそうだ。
(2026年4月号掲載)






