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- 【特集】外国人との共存は地方都市消滅を防ぐ
<<前年比33万人増の在留外国人 受け入れて安定の賃貸経営>>
日本に住む外国人の数は年を追うごとに増えていく。一方で減り続けているのが日本人の人口だ。賃貸住宅のオーナーにとって、外国人受け入れは「待ったなし」の状況になっている。
在留外国人の数は過去最高を記録
外国人との共存は地方都市消滅を防ぐ
グローバルトラストネットワークス(東京都豊島区)
後藤裕幸社長

日本の人口減少は急激に進んでいる。総務省の人口推計によると、2025年5月の日本に住む日本人は1億2015万5000人、前年同月比で89万人減少した。一方で、在留外国人の数は358万9000人となり、前年に比べて33万7000人増えた。これは、労働者不足から、外国人の受け入れが活発化しているためだ。この流れは今後も30年以上続くと見込まれている。
外国人専門の家賃保証会社のパイオニアであるグローバルトラストネットワークス(以下、GTN:東京都豊島区)の後藤裕幸社長によると、在留外国人は大きく二つのタイプに分かれるという。一つが、工場勤務や福祉施設に勤務する労働者らだ。以前から一定数日本に在留しており、一般的には物価や賃金の低い国から一時的な就労のために来日する。工場がある地域に外国人の受け入れは分散していくため、地方が外国人受け入れの主戦場になると後藤社長は考える。
「新たに工場ができた地域の管理会社が、外国人労働者の受け入れに困り、当社に問い合わせる例も少なくありません」(後藤社長)
こうした外国人労働者の受け入れは地方都市の人口減少を食い止める役割を担うと考えられる。例えば、受け入れに積極的な福岡市を例に挙げると、24年12月の人口は、前年同月比で1万7393人増加し、165万9098人となった。一方で、人口減少が進む都市もある。秋田県の場合、23年10月時点で前年同月比1・7%減の91万3514人。計算では1・7%の人口減少が毎年続くと、30年で半減してしまう。今後、地方での外国人受け入れを活発化させる場合、居住場所、つまり賃貸住宅が不可欠だ。外国人を受け入れることは家主にとって経営上、重要な選択になってくる。
「日本人の人口減少を考慮すると、外国人を受け入れなければ空室は避けられません。家賃の継続的な収益が期待できるため、外国人の受け入れは経済的合理性があるといえます」(後藤社長)

欧米からの移住者増加 生活の質の高さが見直される
もう一つの外国人層は、欧米や中国・韓国の富裕層たちだ。22年ごろから流入が始まった。一度、インバウンド(訪日外国人)として滞在し、日本での暮らしやすさに魅了されて就労して居住を始める人も多いのだという。
「例えば『アメリカで年収3000万円を稼いでいるが、たとえ1500万円まで収入が下がっても日本で暮らしたい』と話す外国人もいます。日本は物価が比較的安く安定しており、給料と比較すると生活費にかかる費用のバランスも良好です。また水道水をそのまま飲むことができるようなインフラの安全性も担保されていますし、何より治安がいい。外国人にとって生活しやすい国だと考えられています」(後藤社長)

24年4月からは、IT(情報技術)を活用して世界各国を移動しながら働く「デジタルノマド」向けの在留資格「特定活動」ビザの発給が始まった。同ビザを取得すれば、海外の企業でのリモートワーク制度を利用して働きながらも、日本で生活することができる。このように、政府も外国人の日本定住を推進しているのだ。
こうした外国人は主に1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)に居を構える。経済的にも安定している層であるため、賃料が高い物件であっても入居が決まるという特徴があるようだ。
「日本人向けの住宅として、20万円の家賃で募集していても空室が増えるばかりだった大手デベロッパーの物件で外国人入居者の受け入れを始めたところ、家賃を下げることなく満室を実現したと聞きました」と後藤社長は話す。アジア圏の留学生の需要をつかむことも高家賃帯で貸せるため安定収入を得ることにつながるという。特に、中国人留学生の場合、国の「一人っ子政策」により、父方の祖父母と母方の祖父母、両親の合計6人から1人の子どもが資金援助を受けられるパターンが多いからだ。
「外国人受け入れに躊躇(ちゅうちょ)する家主に対して、何が何でもイデオロギーを変えろというつもりはありません。ですが『日本人の数が減り、外国人の数が増えている』ことは事実です。そうなるとマイノリティーへの寛容性が経営に直結するのではないでしょうか」(後藤社長)
2024年6月の法改正により技能実習制度は、育成就労制度に移行する。従来の技能実習制度では転職が難しかったが、育成就労制度では同一職種で転職ができるようになる。転職に伴う外国人の引っ越しの増加が見込まれ、受け入れニーズも一層高まるだろう。
(2025年8月号掲載)
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外国人受け入れの実績を積み、問題点を把握
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