My賃貸経営スタイル:高齢者福祉への貢献

土地活用高齢者住宅・介護福祉施設

生活費補うために始めた家主業 高齢者福祉への貢献に目的が拡大

 会社勤務の傍ら家主業を行う舟橋裕二オーナー(埼玉県春日部市)。千葉県、埼玉県、茨城県に築古戸建て6戸を所有し、満室経営する。

 賃貸経営を検討し始めたのは2008年ごろ。リーマン・ショックをきっかけに将来への不安を感じたからだ。物件探しの際にふと競売物件サイトをのぞいてみたという。すると、300万円で落札された物件が、2カ月後には一般的な不動産物件サイトで600万円で売られていると気付いた。「競売物件は市場価格に比べて安く買えると確信しました」と振り返る舟橋オーナー。自身も競売物件を購入することにした。11年と13年に茨城県古河市で競売物件を購入。それぞれリフォームして貸し出した。

舟橋裕二オーナー(50)(埼玉県春日部市)

 当初は、子どもの教育費や生活費を補おうと始めた賃貸経営だったが、16年ごろから高齢者福祉に貢献できないかと視野が広がった。きっかけは任意売却物件を購入したことだった。

 3戸目となるその物件は高齢入居者の孤独死があったもの。特殊清掃は済んでいたが、まだ臭いが残っていた状態で購入。きれいにリフォームして入居募集の段階までこぎ着けると、隣の住人から感謝された。舟橋オーナーは「そのまま放置され、すさんだ空き家になるのではないかと心配だったようです」と話す。

 4戸目も任意売却物件を購入。ごみがたまり、立ち木が隣家や道路まで伸びた「特定空き家」で近隣住民から自治体に多数の苦情が寄せられていたのだ。住んでいた前所有者は高齢で自分では対処できない状態だった。舟橋オーナーがごみや立ち木を処理し、リフォームして貸し出すと、近隣住民から「迷惑していましたが、きれいになって助かりました」とお礼を言われた。

 3、4戸目をリフォームして近隣住民から感謝されたことで、賃貸経営で社会貢献ができると実感した舟橋オーナー。孤独死や放置された空き家の問題、高齢者の住まいや介護などに目が向くようになった。

高齢者向け施設運営の再チャレンジに意欲

 18年からは、埼玉県内の複数の福祉従事者・団体と積極的な交流を図り、勉強会に自主的に継続して参加。

 20年にはケアマネジャーや看護師らが入会するNPO法人と連携して、埼玉県内の戸建てを借り、高齢者向けのシェアハウスを開設した。物件の中に「高齢者の困り事相談窓口」を設置。高齢者は家主から敬遠されるため新たに賃貸物件が借りにくいことと、入居することができても日頃の生活が孤立しがちなことの2点の課題の解決を目指した。

 しかし、短期間で退去する入居者が多く定着率を上げられなかった。3年間で事業を断念。舟橋オーナーは「難しい性格の入居者も多く、その点を読めませんでした」と語る。

 1度の失敗では諦めない。今も福祉従事者らとの交流を続け、知見を深めている。「再び高齢者向けシェアハウスの運営を目指します」(舟橋オーナー)

▲4戸目に購入した特定空き家で処理される前(上)と処理後(下)の立ち木

(2024年12月号掲載)
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