【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:9月号

税務税金対策

税金を抑える
~経費の勘違い! 間違ったデッドクロス対策(前編)~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。

 前回、デッドクロスについて説明しました。今回は、間違ったデッドクロス対策について解説します。

 デッドクロスとは、年間の減価償却費よりも年間の元本返済額が大きくなる状態です。

 年間の減価償却費 > 年間の元本返済額


 私はこのデッドクロスの式だけを見て対策を考えるのは危険だと考えています。なぜなら、この式に振り回されて、間違った対策をしている人が多いからです。

 一般的にデッドクロス対策として紹介されている例を基に、検証していきます。

① 一部繰り上げ返済をする 

 一部繰り上げ返済のうち、融資期間はそのままで、月々の返済額を下げる方法です。これによって年間の元本返済額が減り、デッドクロスを回避することができます。

 しかし、そもそも繰り上げ返済をする資金があるのかどうかが疑問です。もし、繰り上げ返済をする資金があるならば、資金繰りに困っていない状況だということです。そこで、あえて繰り上げ返済をする必要があるのかを考えなければなりません。低金利の借入金を返済するよりも、物件に投資したほうがいい場合もあります。

 間違った対策とまではいえませんが、費用をかけてまで繰り上げ返済をする必要があるのかということです。

② 借入期間を延ばす(リスケをする)

 金融機関に依頼して融資期間を延ばしてもらえれば、月々の返済額は減ります。これは確かに、デッドクロス対策としては有効です。

 しかし、デメリットもあります。このようなリスケは、当初の返済期間の約束を守れないことになり、金融機関における格付けが下がる要因になります。格付けが下がると金利が上がったり、次の融資が受けられなくなったりする可能性があります。

 これを回避するためには、ほかの金融機関で借り換えるのと同時に、融資期間を延ばしてもらう交渉をすることです。新規の借り入れであれば、格付けに影響することはありません。

 ただし、借り換えの費用(登記費用や融資手数料など)が多額になる可能性があります。費用をかけてまでデッドクロス対策をしなければならないのか(立ち行かない状況なのか)、判断が必要です。

 こちらも間違った対策ではありませんが、最終手段にすべきだと思います。

③ 減価償却費を多く取れる資産を購入する

 これは、デッドクロスになる原因が、減価償却費が少なくなることにあると考えての対策だと思います。よくやりがちな対策でしょう。

 しかし、これが危険をはらんでいることを忘れてはいけません。次回、詳しく解説します。

【解説】
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
(2025年9月号掲載)

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