見守りサービス導入で入居者に寄り添う

賃貸経営入居者との関係づくり

<<第45回 入居者との思い出>>

高齢者見守りサービス導入やリノベ 入居者に寄り添う家主でありたい

 2016年6月上旬の早朝、石塚恭章オーナー(新潟市)の携帯電話が鳴った。

 「体調不良で動けない。トイレにも行けない。助けて!」。そうSOSを出してきたのは、石塚オーナーが所有する物件「ライフコア笹口」に入居している80歳の男性Aさんだった。

 石塚オーナーは即座に119番通報して救急車を呼び、救急隊員と共にAさんの元へ駆け付けた。Aさんの意識ははっきりとしていたが足が動かず、数人がかりで手助けしなければ動けない状況だった。

石塚恭章オーナー(新潟市)

[プロフィール]いしづか・やすゆき
新潟市生まれ。大学卒業後、地元のスーパー勤務を経て、東証1部に上場していた塗料メーカーの営業職に。病により退職後、不動産賃貸経営の家業を継ぎ、ライフコアを起業。現在マンション3棟、アパート1棟、合計79戸を運営中。

 

 その後、石塚オーナーは救急車に同乗して病院に行き、入院に必要な手続きを行った。同時に連絡先を知っていたAさんの別れた妻に電話をかけ、病院に来るように依頼。到着した元妻への引き継ぎを済ませた。

 「Aさんは40代の頃からライフコア笹口に住んでいたので、私も元奥さんや息子さんと親しくしていました。お付き合いがあったからこそ元奥さんは『石塚さんに迷惑はかけられない』と病院へ来てくれたのです」と話す石塚オーナー。このことがきっかけとなり、Aさんは元気になって退院した後、再び元妻や息子と一緒に暮らすことになった。

 ライフコア笹口は「賃貸だからこそワンランク上の生活を」をコンセプトに、入居予定者の希望を取り入れたオーダーリノベーションを行っている。そのため、一度入居すると長く住む人が多い。

 また同物件にはAさんのような1人暮らしの高齢入居者が6人いるが、対応には万全を期しており、新潟市の高齢者見守りサービス「あんしん連絡システム」を導入。緊急時に24時間体制の外部の受信センターに通報できる装置を設置している。しかし、1人暮らしの高齢入居者が困ったときに、SOSの連絡が来るのは石塚オーナーの携帯電話なのだという。

 「長年、入居者の困り事に可能な限り対応してきました。入居者は家族同然と思っているので、少しも苦ではありません。皆さんが私を信頼してくれている証拠ですし、これからも頼られる家主でありたいと思っています」(石塚オーナー)

(2025年 10月号掲載)

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