東京都がオーナー向け省エネ補助金
コンシェルジュの伴走支援で利用しやすく
都内に棟単位で賃貸物件を持つオーナーにとって、見逃せない新たな支援策が始まっている。東京都が2025年度の事業として始めたのが「コンシェルジュ事業」と「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」だ。
省エネ診断や補助金案内
コンシェルジュ事業は、東京都に登録されたコンシェルジュ事業者が省エネ性能診断から補助金の案内、断熱改修の実施までを一貫して支援する。大きく分けて二つの支援がある。
一つ目は、省エネ性能診断の紹介と説明。事前に省エネ性能診断の方法について案内を受ける。診断後は「省エネ性能診断報告書」や「改修プラン提案書」に基づいた説明を受けられる。
二つ目は、賃貸物件で活用可能な各種補助金の案内。断熱改修、再エネ設備やEV(電気自動車)充電設備の導入、耐震改修など、多岐にわたる補助金について個別に教えてもらうことができる。
相談は、省エネ性能診断の前後、断熱改修の前後で各1回、計4回まで無料で受けられる。
コンシェルジュは「物件」と「専門」の二つの区分に分けられ、2社1組でオーナーをサポートする体制となっている。
「物件」は賃貸物件の管理会社などが担い、自社管理物件の魅力向上に向けて、オーナーにとって身近な立場でフォローする。「専門」は設計事務所や工務店などが担い、省エネ性能診断や断熱改修について専門的な立場から説明を行う。「専門」の事業者は診断・断熱改修の施工事業者を兼ねることも可能で、コンシェルジュとしての説明後に、オーナーがその事業者に依頼することもできる。

断熱改修で補助率8割も可能
オーナー向けの省エネ補助金の一つとして大きな目玉となるのが、賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業だ。主に東京都に賃貸住宅を1棟所有するオーナーを対象に、省エネ診断や断熱改修、再エネ設備導入に対して助成金を交付する。
断熱改修については、都の補助金(補助率3分の2)と、環境省の「先進的窓リノベ2025事業」の補助金を併用できる場合もある。図1のように補助率にして実に約8割をカバーする試算だ。「国の先進的窓リノベ事業の補助金は現時点で来年度以降の情報が出ておらず、今年度が最後になる可能性もあります。今のうちに活用することをおすすめします」(東京都環境局気候変動対策部マンション環境性能推進担当課長の安達紀子氏)
注目すべきもう一つのポイントは、断熱改修後の省エネ性能再計算と「省エネ性能ラベル」作成にかかる経費まで助成対象となる点だ。
「これからは、光熱費の安さや健康効果など『環境性能の高さ』で物件を選ぶ時代になります。新築物件では省エネ性能ラベルの表示が進み、既存物件が不利になる可能性もあるでしょう。補助金を活用して断熱改修を行い、省エネ性能ラベルを表示すれば『快適で光熱費は新築並みに安いのに、家賃は新築より手頃』という強みを打ち出すことができます」(安達課長)
コンシェルジュの支援申込期間は、26年2月20日までを予定(ただし申請件数が予定件数に達した時点で終了)。

※※東京都提供資料を基に地主と家主で作成
(2025年10月号掲載)