Vol.10 幸福感のイメージあふれるピンク
取り入れ方次第でセンスアップ
今ではジェンダーレスな色
今回はピンクを取り上げます。ピンクと聞いて「優しさ」や「愛情」を連想する人も多いかもしれません。実際ピンクには、気持ちを穏やかにし、リラックスさせる心理的効果があります。そしてストレスを軽減させ、幸福感を感じさせてくれるのです。
しかし、色としての人気はあるのですが、建築物に取り入れようとすると、意外に悩ましいようです。「甘い」「女性的」といった印象を抱かれ、以前は外観や内装への使用を避けられることもありました。
ところが最近では、ピンクはジェンダーレスな色として認識され始めています。特に、ファッションの世界でその勢いを感じている人も多いのではないでしょうか。そして洗練された色として、建築やインテリアの世界でも広く使われるようになってきました。特にくすみ系や土っぽさを含んだピンクは、空間に深みや落ち着きを与える色として注目されています。

ピンクは色みを選んで素材と組み合わせる
例えば、ヨーロッパの街並みの中で見かけるくすんだローズピンクやテラコッタ系の外壁は、木製の茶色いドアや黒いアイアンと調和し、クラシックでありながら個性もあるたたずまいを演出します。日本の賃貸住宅においても、外壁の一部や門周り、ポストなどにポイントとして取り入れることで、差別化された外観をつくることができるのです。
個性を打ち出す使い方がある
ピンクは視覚的に記憶に残りやすい色でもあります。写真映えしやすく、物件一覧の中でもふと目を留めてもらえることが多いのです。内見の際も、空間にピンクが醸し出す柔かさや上質さが漂っていると、入居希望者の記憶に強く作用し、検討候補に残る確率が高くなるでしょう。
内装でも、モルタルや木、アイアンなどと組み合わせると、ピンクの印象が引き締まり、甘さを抑えた空間に仕上がります。例えば、洗面室の壁やキッチンのタイルに淡くくすんだピンクを使うと、実用性の中にぬくもりと個性を感じるアクセントになります。
ピンクは、一見扱いが難しそうに思えても、使う分量やトーン、組み合わせる素材次第で、驚くほどセンスよくまとまる色です。華やかさよりも、空間に〝余韻〟を残すような静かな魅力。無難ではないけれど、品がある。そんな効果を狙って、ピンクを取り入れてみる価値は十分にあるといえるでしょう。
眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。
(2025年 10月号掲載)