<<嫁ぎ先を盛り立てる>>
婚家の借金整理と事業の転換
商売人の英才教育生かし財を守る
1970年に日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ「細うで繁盛記」。商売の基本をたたき込まれて育った主人公が熱海の旅館に嫁ぎ、婚家の商売を盛り上げていくというストーリーだ。幾多の困難を乗り越える主人公の奮闘により旅館の経営状況は順調になっていく。このドラマの主人公よろしく、幼少期に祖父にしっかりと教えられた不動産経営の「いろは」を生かし、婚家を守り抜くのが湊祐貴子オーナーだ。
湊祐貴子オーナー(大阪府東大阪市)

年間家賃収入は約5000万円 嫁ぎ先と実家の不動産を経営
現在、湊オーナーが経営する不動産は、賃貸経営を行っていた自身の実家から受け継いだものと、嫁ぎ先の財産の両方がある。
「私の祖父が経営していた物件、自分で購入した中古マンションと底地を借りて建てたマンション、そして婚家で行っていた青果の仕分け業の工場跡地を活用したものがあります。また、かつて嫁ぎ先が事業の助けにと経営していた長屋があります。これは次なる活動の準備中です」(湊オーナー)
これらすべてを合わせると、法人・個人でマンション4棟、戸建て3戸となる。8戸の長屋があった場所は現在更地となっており、2026年2月に戸建て3戸(3LDK)が竣工予定となっている。

▲かつて工場だった場所に立つマンション
年間家賃収入は全部合わせて約5000万円になる。20年と21年に建てた2棟のマンションの家賃収入がそれぞれ年間約1000万円、祖父から受け継いだ阪急電鉄阪急京都本線淡路駅の16戸のマンションが約1400万円、自身で購入した北大阪急行電鉄南北線の緑地公園駅前の14戸が約1000万円。戸建て物件は3戸で年間約300万円というのがその内訳だ。
今でこそ大きなトラブルもなくほぼ満室経営だが、ここまでの道のりは、それはもう大変なものだった。
10代で嫁いでから3人の子どもを育てつつ婚家の商売に入った。義父の借金によって、一家が破産の危機に追い詰められたこと……そして、経営していた工場を襲った犯罪行為……。今となっては「苦労はしたけどねぇ」と笑い飛ばす湊オーナー、逆境を切り抜けた経験が自身のひとつの芯になっている。

▲鴫野駅近くのマンション。コンセプトはプロバンス
激動の2000年代 嫁ぎ先の借金、工場の火事
湊オーナーの実家の家業は不動産経営とたばこの卸売りだった。共に暮らした祖父から商売人の心構えをしっかりたたき込まれて成長したという。「小学生の頃から、未払い家賃の集金に駆り出され、子どもながら一人で未払い入居者の大人と交渉していました。小さな女の子を滞納者のところに取り立てに行かせるなんて、今では考えられませんね。いや、昔でもめったになかったでしょう(笑)。英才教育もいいところです。でも、この経験が今の私につながっています。肝が据わっているというのでしょうか、多少のことには動じませんし、入居者に言うべきことも臆せず言えます。それも祖父のOJTのおかげでしょう」(湊オーナー)
そうやって育った湊オーナーは10代の頃、遠縁の親戚のもとでアルバイトをしていたところ姑に見初められる。高校卒業とほぼ同時、19歳で結婚。20歳の頃には子宝に恵まれた。
嫁ぎ先は青果の仕分け・出荷業を家業としていた。大きな工場1カ所、小さな工場2カ所が稼働。膨大な量のホウレンソウや小松菜などを梱こん包ぽうして小売店に卸すという商売だった。「私は工場に立つことはほとんどありませんでしたが、伝票の管理やパソコン作業をずっとしていました」(湊オーナー)。嫁いだ1981年から事業を畳む2019年までずっと、休む間もなく働いたという。
「忙しかったですが嫁姑の問題とは無縁でしたね。もともと遠縁の親戚で、私が小さいころからよく知っている間柄でしたから。でも、嫁姑の確執どころではないトラブルが待っていたのです」(湊オーナー)

(2025年10月号掲載)
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