長期的な安定収入が見込め、節税にもなり、それほど手間がかからない賃貸経営は人気の土地活用方法です。一方で、不動産投資を検討している土地の周辺に賃貸住宅がたくさんある場合は、競争が激化して思うような利益が得られないことも。そこで、国土交通省の「建築着工統計調査報告・住宅着工統計」で、2024年に東京都を除く関東エリアにおける貸家(賃貸住宅)の新築着工数をみることで、同エリアの賃貸市場の状況を探ります。
関東エリアでの土地活用、賃貸住宅の新築着工数は増加傾向

国土交通省では建築基準法に基づき、全国の建築物の建設の着工状況を明らかにするため建築主から都道府県知事に提出される建築工事届を集計し「建築動態統計調査」として毎月公表しています。その中で、特に新たに建築された住宅に関する調査結果をまとめたものが「住宅着工統計調査」です。
同調査結果によると、東京都を除く関東エリアで、24年に着工した賃貸住宅は7万6629戸。23年から5.5%増と堅調な増加傾向を見せており、全国の賃貸住宅の新築着工戸数34万2092戸のうち22.4%を占めています。
関東エリアにおける構成割合では、神奈川県が35.3%で最多。次いで埼玉県、千葉県と続きました。
神奈川県では新築賃貸住宅での土地活用が前年度比6.9%増

関東エリアにおいて最も構成割合が多かった神奈川県の24年の賃貸住宅着工数は、2万7044戸。前年比では6.9%の増加となり、神奈川県の新築着工総戸数6万6860戸のうち40.4%を占めています。
また、賃貸住宅の構造別に見ると、木造が1万1711戸で最多、次いで鉄筋コンクリート造が8154戸、鉄骨造が6972戸の順となりました。
建て方別では、共同住宅が2万4043戸で新築賃貸住宅着工数における構成割合は88.9%です。長屋建ては2656戸、一戸建てが345戸となっています。
埼玉県の新築賃貸住宅での土地活用は木造が過半数を占める

関東エリアで2番目に構成割合が多かった埼玉県の24年の賃貸住宅着工数は、2万258戸。前年比では5.3%の増加となり、埼玉県の新築着工総戸数5万1488戸のうち39.3%を占めました。
また、賃貸住宅の構造別に見ると木造が1万383戸、構成割合で51.3%となり最多。次いで鉄骨造が6174戸、鉄筋コンクリート造が3661戸の順でした。
建て方別で79.6%を占めて最多だったのは共同住宅で1万6116戸。長屋建ては3608戸、一戸建ては534戸となりました。
千葉県の新築賃貸住宅での土地活用は前年度比12.0%の増加

千葉県の24年の賃貸住宅着工数は1万9411戸で、構成割合は関東エリアの4分の1となる25.3%でした。千葉県の新築着工総戸数4万4008戸に対しては44.1%です。
千葉県の新築着工総戸数が前年度比で1.2%の減少となる中、賃貸住宅は前年度比で12.0%と大きな伸び率となりました。その構造別内訳を見ると、木造が8677戸で最多、次いで鉄骨造が5710戸、鉄筋コンクリート造が4996戸、その他10戸の順となっています。
建て方別では共同住宅が1万4972戸、長屋建てが4176戸、一戸建てが263戸でした。
新築賃貸住宅での土地活用が関東エリアトップの増加率となった群馬県

群馬県の24年の賃貸住宅着工数は2846戸。戸数としては関東エリア6県の中では5番目だったものの、前年度比では24.0%とトップの増加率となりました。群馬県の新築着工総戸数1万69戸における構成割合では28.3%にとどまっています。
構造別内訳を見ると、木造が1891戸で最多、次いで鉄骨造が735戸、鉄筋コンクリート造が220戸となり、鉄骨鉄筋コンクリートはありませんでした。
建て方別で最多となったのは長屋建てで1574戸、共同住宅が1166戸、一戸建てが106戸となっています。
新築賃貸住宅での土地活用が前年比減となった茨城県

関東エリアで新築賃貸住宅着工戸数が4749戸で4番目だった茨城県ですが、前年度比では11.5%の大幅減少となりました。茨城県の新築着工総戸数1万4615戸における構成割合では32.5%です。
構造別内訳を見ると、茨城県の賃貸住宅着工数の56.1%となる2662戸が木造で最多。次いで鉄骨造が1490戸、鉄筋コンクリート造が576戸の順となっています。
建て方別では長屋建てが2908戸で最多、共同住宅が1687戸、一戸建てが154戸でした。
栃木県の新築賃貸住宅による土地活用は 前年比3.6%減

関東エリアで新築賃貸住宅着工戸数が最も少なかったのは栃木県の2321戸でした。前年度比は3.6%の減少となりましたが、栃木県の新築着工総戸数は前年比14.0%と大きく減少しており、関東エリアで唯一1万戸を下回る8673戸にとどまっています。総戸数の減少率と比べると賃貸住宅は若干の減少に収まっている印象です。
構造別内訳を見ると、木造が1076戸で最多。次いで鉄骨造が945戸、鉄筋コンクリート造が300戸となり、鉄骨鉄筋コンクリートはありませんでした。
建て方別では最も多かったのは長屋建てで1110戸、共同住宅が1054戸、一戸建てが157戸となりました。
関東エリアの新築賃貸住宅の傾向を知って、納得のいく賃貸住宅建築を
関東エリアで最も賃貸住宅の新築着工戸数が多く、前年比でも増加となった神奈川県は土地活用において賃貸住宅を選ぶ人が多い人気エリアと言えるでしょう。また前年比24.0%の大幅増加となった群馬県は、戸数では関東エリアで5番目。戸数が最も少なかった栃木県だが、群馬県のように増加傾向に転じる可能性は十分にあると言えます。
構造の傾向を見ると、木造がすべての件で最多でしたが、神奈川県や千葉県が鉄骨造と鉄筋コンクリート造が同等だったのに対し、栃木県と茨城県は鉄骨造の割合が大きくなる傾向。
さらに、神奈川県、埼玉県、千葉県では共同住宅が長屋建てを上回り、群馬県、栃木県、茨城県ではその反対の結果となっています。
建材価格や人件費が高騰している中、新築で賃貸住宅を建てるには多額の費用が掛かります。活用を考える土地のエリア的傾向を把握し、納得のいく不動産投資を実現しましょう。
(2025年12月5日更新)

エリア別で考える土地活用、関東エリア(東京都を除く)の新築状況は?
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