<<テナント活用 Special Interview>>
3年弱で1800店舗・会員数120万人超えのモンスターブランド
24hジム「チョコザップ」がFC事業に本格参入
ジム運営をはじめとするヘルスケア・美容事業などを手掛けるRIZAPは、今年5月にコンビニジム「chocoZAP(以下:チョコザップ)」のFC募集を開始した。月額2980円でトレーニングマシンや美容マシンのほか、ゴルフやカラオケといったエンターテインメントを楽しめる同店は、フィットネス未経験者の需要を掘り起こし、約1年で会員数においてフィットネスジム業界ナンバーワンに上り詰めた。瀬戸健社長に、チョコザップのFC化の経緯や今後の成長戦略について聞いた。
chocoZAP(RIZAPグループ:東京都新宿区)
瀬戸健社長

スタートから大幅投資 デジタルに活路を見出す
――御社のチョコザップ事業は急速な店舗拡大を遂げる一方で、赤字続きでした。しかし、 8月に発表した26年第1四半期の最終利益は実質前年同期比約29億円の改善となり、営業黒字となっています。
瀬戸 これまでは新規店舗を増やして広告宣伝費をかけ、一気にお客さんを集めるための投資をしてきました。加えて、ジムで使用するマシンの償却期間を早めました。一般的には10年くらいのところ、当社は1年にするなど、ある意味マイナスを早めに付けていました。その分、始めは赤字を掘りますが、会員数を集めた後、サブスクで回収できるモデルを目指してきました。
――利益改善した理由をお伺いしたいです。
瀬戸 コスト構造の見直しが関係しています。前期はトラックレコード2年目なので、イレギュラーもありました。エアコンやエステマシンをフル稼働させたことによる故障、私服利用によるマシンの損傷などが発生し、緊急対応を行いました。去年はエアコンの修理だけで 億円かかりました。
――御社はパーソナルトレーニングジムの「RIZAP」のほか、美容関連用品等の販売事業やアパレル事業など多角経営をされていますが、そもそもチョコザップはどのような経緯で生まれたのでしょうか。
瀬戸 我々は「危機」と「チャンス」の両方に取り組むメソッドで経営してきましたが、直近の危機はコロナでした。RIZAPは対面型なので休業も強いられましたし、マンツーマン英会話の「RIZAP ENGLISH」は対面からオンラインに切り替わりました。しかし、店舗撤退するにしても違約金が残っているので、これを何とか使わないといけない。ならば、「できることは何でもやろう」という思いがありました。
それと同時に、我々はRIZAPでお客様の結果にコミットするため、人材教育や品質の安定を継続して図ってきましたが、その一方で、一人ひとりマンツーマンサービスを提供する難しさを感じていました。そんな中、コロナ禍のデジタル化によってハイパフォーマーのライブ配信やオンデマンドを活用したマシン説明、入退管理や監視制御など、我々が今までできなかったことを含めて色んなことができるようになり、デジタルを活用すればさらに多くの人に広められると感じました。また、RIZAPは日本で一番高いジムだったので、今度は日本で一番安いジムにしようということでチョコザップが生まれました。
――スピーディーな店舗拡大を狙うなら、FC展開も有効な手段の1つですが、なぜ御社はこれまで直営のみで展開してきたのでしょうか。
瀬戸 我々が誰よりも当事者となるべく、失敗やノウハウは全部自分たちで貯めようと考えたからです。そのため、香港や台湾、アメリカといった海外店舗も全部独資で運営しています。逆に、そうしないと他人事になってしまうので、スピード感ある改善も難しくなります。

――それがなぜ、このタイミングでFC化に至ったのでしょうか。
瀬戸 我々が出せないところへの出店を進めるためです。企業や自治体などと提携することで出店を加速し、更なる成長を図ります。また、パートナーとの連携によるシナジー創出で、さらに価値を上げられる部分があると考えています。たとえば、所有物件や人材、商品を含めて自社のアセットを使えていない会社もあります。対して、チョコザップは30〜40坪で開業できるため、お持ちのアセットにフィットしやすいです。そのため、アセットを活用できていない企業に導入してもらい、自社商品を勧めて収益性を上げたり、入会者特典を付けて会員数を増やしたり、既存の人材をメンテナンスや入会サポートに回して店舗品質を向上させるなど、色んなシナジーが考えられます。空き家を含めて資産を有効活用したい方と組むことで、あと4000店舗ほど出せる可能性があると目論んでいます。

▲コロナ禍の2022年にオープンし、順調に店舗数を伸ばしてきた
物件ごとに最適な設備を提案 地方にも出店可能な無人モデル
――遊休資産の活用を視野に入れているとのことですが、物件のスペックはどの程度を想定していますか。
瀬戸 持ち物件のスペックはさまざまなので、厳密には指定しません。FC店舗の新規出店の必要条件としては24時間営業が可能で、ある程度の視認性、間口5m以上、正面に袖看板を設置するくらいです。郊外店舗は5台以上停められる駐車場を付けます。
――チョコザップのサービスラインナップは、トレーニングマシンやセルフエステ、洗濯・乾燥機やカラオケとさまざまで、店舗によって設備は異なります。幅広い物件で開業可能とのことですが、どのように導入設備を決めているのでしょうか。
瀬戸 我々はAIカメラを通して、どのマシンがどれくらい利用されたかデータを取ってきました。基本は稼働率が高いものから順番に埋めていきますが、坪数に応じて最適な設備を提案していきます。
――出店立地は繁華街や住宅地、過疎地に関わらず、網羅していく考えですか。
瀬戸 始めから一気に拡大すると決めていたので、早い段階で人口の少ないエリアも含めてあらゆる前提で出店し、すでにテストを終えています。当店は無人ですが、掃除は「フレンドリー会員」、マシン関係は「セルフメンテナンス会員」といったように、お客様に運営を支えてもらっています。人がいなくても運営が成り立つシステムを確立しているため、採用や教育の必要もなく、人口の少ないエリアでも十分成り立ちます。TV番組「ナニコレ珍百景」にも出た、超田舎の畑のど真ん中にある店舗でも十分ペイしています。当店は2025年8月14日時点で1823店舗になりましたが、ビルの立ち退きを除き、撤退実績は現在まで1店舗もありません。

▲稼働率の高い設備を配置
――持ち物件の活用と無人運営の確立により損益分岐点を下げ、立地条件に囚われることなく出店できるようになりました。
瀬戸 1800店舗を出店する中では当然、上手くいく・いかないもあり、その分データも貯まっています。条件を変えて出店してきたことで、立ち止まらずに進めましたし、立地や状況に応じたデータ特性など色々なものが見えるようになりました。
過去には地下・1階・2階・3階・4階に出店してきましたが、3階以上だと芳しくないデータも残っています。本当にダメなところと良いところのデータが揃っており、良いところに出店すれば勝てる確率はかなり高いです。
- ▲美容設備も多数展開
- ▲フレンドリー会員による店内清掃
会員サービスを拡充 シェアリングで総合力を発揮
――FCプランを教えてください。
瀬戸 開業パターンは、オーナー様が出店先を選定する「新規店舗」と、直営店舗を引き継ぐ「既存店舗」の2種類です。
「新規店舗」で開業する場合は加盟金200万円、オーナー向け研修を含む開業準備費200万円、工事設備費1800~3500万円、合計2200万円からとなります。「既存店舗」の場合は加盟金200万円、譲渡店引継準備金200万円に加え、物件により変動する機器設備購入費、営業権、物件取得費を含めて、合計2700万円からという想定です。現在、先着50店舗限定で加盟金200万円を値引きしているため、新規店舗の場合は2000万円から、既存店舗の場合は2500万円から開業可能となっています。なお、現段階ではトライアル募集としており、今後変更が生じる可能性もあります。
――それぞれの収益モデルは。
瀬戸 直営店実績を踏まえた試算で新規店舗の場合、初年度売上は稼働会員数814人で約1907万円、償却前営業利益は約533万円です。経費の内訳は地代家賃約 22・6%、水道光熱費約4・1%、ロイヤリティ15%、広告宣伝費10万円、システム費10万円、運営管理費11万円、支払手数料3%、そのほか備品消耗品費、本部に店舗修繕や備品補充・清掃・マシン修理などの維持管理をオプションで発生する場合は、別途費用がかかります。シミュレーションでは、投資回収期間は4年2カ月の想定です。

一方、既存店舗の場合、初年度売上は会員数988人で約2726万円。償却前営業利益は約1152万円。投資回収期間は3年9カ月を想定しています。
――サブスクモデルの場合、売上計上はどのようにされるのでしょうか。
瀬戸 該当月の最多来館店舗に月会費全額が計上されます。そのため、売上を上げるにはマシンメンテナンスや清掃、サポートに力を入れ、お客様に1番良いと思ってもらうことが大切です。
――そこで競争力を高めていくわけですね。
瀬戸 そうして切磋琢磨しながらも、稼働率や生産性、効率を上げるためにもシェアリングを進めていきます。チョコザップの強みは総合力ですから。また、会員制サービスなので、マルチで色々なものをやってもいいわけです。たとえば、会員向けサービスの1つに最大年1回のMini人間ドックがあります。これは、新宿の医療機関でMRIかCT、エコーのうち1つの検査を追加料金なしで受けられるサービスです。MRIのような年に1回でも良いサービスに関しては、本部で負担して全店でシェアリングしてもらい、身近にあった方が良いサービスは各店舗に置いてもらう。こうしたシェアリングエコノミー的な考えもあります。

▲一部店舗限定のサービスを全店でシェアリング
――無人運営のため、オーナーの業務はほとんど発生しないと考えてよいのでしょうか。
瀬戸 ある程度限定されています。チョコザップの運営は人ではなく、設備やシステムなど再現性のあるものに頼っています。人が関わると上にも下にもブレが生じるため、当店は如何に無人で回すかにこだわってきました。ビジネス形態としては、マンション投資やランドリーに少し似ていると思います。
――中長期的に見て、チョコザップはRIZAPグループの中でどのような位置づけを目指しているのでしょうか。
瀬戸 チョコザップのマーケット規模は、非常に大きいと感じています。RIZAPは高単価ですし、本気の方限定という形で集客しているため対象が絞られます。大多数の方はストイックにならず、目標を決めずに運動したいのだと思います。その点、チョコザップは体型維持や自分磨きくらいの緩い感覚で利用でき、かつ低価格です。可能性や需要はまだまだあると実感しています。
1978年福岡県生まれ。2003年に健康コーポレーション(現・RIZAPグループ)を設立。2006年に札幌証券取引所「アンビシャス」へ上場。2012年よりパーソナルトレーニングジム「RIZAP」を展開。2022年9月コンビニジム「chocoZAP」をグランドオープン。
(2026年1月号掲載)

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