【特集】どうして変えた? どうやって探した? 管理会社の選び方

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<<管理会社の選び方>>

管理会社は賃貸経営を行ううえで重要なパートナーだ。経営において何を重視するのかによって選ぶ管理会社も変わってくるだろう。オーナー向けの管理会社に関する調査を解き明かしながら、管理会社を変更した経験のある家主が、どのようなきっかけでどうやって新たなパートナーとなる管理会社を探したのかを見ていく。

この記事の目次

4割が管理会社の変更を経験
家主4人の事例
・変更前の問題点
・新しい管理会社の見つけ方
・選ぶ際のこだわり
良好なコミュニケーションの取り方

 

4割が管理会社の変更を経験

――関係性を重視する傾向が見られる

管理会社への委託は8割 メインは「一括委託」

 全国賃貸住宅新聞社が実施した「家主のプロフィール調査2025」によれば、8割以上の家主が管理会社を利用していることがわかった。

 このうち「すべての物件で管理を委託している」が47・5%、「管理を委託している物件もあれば自主管理の物件もある」が35・9%だった。

 また管理会社に管理を委託する場合、所有物件のうちのすべての物件あるいはほとんどの物件について管理を任せている家主が多数を占めた。

 家主たちは具体的にどういった業務を委託しているのか。

 複数回答(回答者数186人)で尋ねたところ、最も多かったのは「入居者募集」の226件。以下、「入退去(更新)の契約」が219件、「入居者のクレーム対応」が215件、「家賃回収」が208件と続き、入居者に関わる業務が上位に並んだ。建物に関わる業務は「原状回復」が174件、「建物の点検・管理」が161件、「修繕」が155件、「清掃」が151件と続いた。

 特に、一棟ものを所有する家主は「一括委託」での管理委託契約が一般的だろう。そのため、家主は入居者に関わる業務から建物に関わる業務まで幅広く委託していることがうかがえる。

対応に関する不満 管理会社変更につながる

 一方で、家主の41 %が管理会社を変更した経験があることがわかった。

 変更の理由を表1に示した。「管理会社の対応が悪かった」が最多で33件。次いで「客付けの弱さ」が19件だった。以下、「管理会社の経験不足」が9件、「管理会社の廃業・撤退」と「管理会社の対応が遅かった」が7件と続いた。管理会社への不満が大きな要因であることが一目でわかる。

 反対に「管理費用を抑えるため」「自主管理に変更した」「建物を建て替えるため」「紹介された管理会社に変更した」など、家主側の都合によるものは件数が少なかった。

担当者との相性重視 委託料の安さをしのぐ

 家主が管理会社を選ぶ際のこだわりについて聞いた結果をグラフ3にまとめた。「自身と担当者との相性」の回答が最も多く102件だった。

 2番目は「対応が早い」が86件、また5番目が「連絡がつきやすい」で44件となっている。

 これらも担当者について言及しているものと想像が付く。多くの家主が担当者との関係性を重視していることがわかる。

 このほか「管理委託料が安い」「そのエリアでのシェア率」「その管理会社が売買案件も紹介してくれる」といった管理会社そのものの特徴にこだわる意見もあった。

 では、家主たちは実際に管理会社に対してどのような課題を感じ、どのようにして変更に至ったのか。管理会社を選ぶ際にこだわった部分は何なのか。これらについて、4人の家主の事例を紹介する。

家主4人の事例から見る
管理会社を変えた時に実践したこと

より良い賃貸経営を考えて管理会社の変更を決めた家主たち。取引先の協力を得たり、自ら能動的に動いて探す例も。選定のポイントもそれぞれで特徴がある。

変更前の問題点

連絡の遅さや対応に不満あり

その1

トラブルを放置された

 

放置物や物件写真の変更 依頼してもなしのつぶて

 親族から相続で引き継いだ築古戸建てと1棟5戸のテラスハウスを所有する髙島里永子オーナー(神戸市)は2021年ごろ、テラスハウスの管理会社の対応に悩んでいた。入居者が私物の荷物を共用部に置いていて、ほかの入居者にとって邪魔になっていたのだ。髙島オーナーは当時、子育て中で、自身も仕事を抱えていたため、すぐに物件を訪問することも難しい時期だった。そこで管理会社に対応するよう依頼したのだが、担当者の動きは見られなかった。

 「そのほかのトラブルへの対応についても、コールセンターから『入居者が○○と要望していますのでオーナーで対処願えませんか』と言われるだけでした」(髙島オーナー)。自分が容易に動けないので管理を頼んでいるのに、オーナーに対処してほしいと言われても困る。そこで24年に管理会社を変えた。

 ところが、新しい管理会社の対応にも疑問を感じた。大規模修繕後に入居者募集を依頼した際、不動産情報サイトに掲載している物件写真が、足場が組まれた工事中のままだった。また室内の写真は掲載されず、図面だけだった。髙島オーナーは掲載内容を更新してほしいと依頼したが「すぐには対応してもらえませんでした。何のために管理費を支払っているのかわからない状態でした」と振り返る。それ以来、管理会社に対して納得できない気持ちが続いた。

何のために管理費を支払っているのかわからないと感じたことがきっかけ

その2

「報・連・相」がない・遅い

 

入居者死亡連絡を怠る 言いにくいことを隠す

 17年から専業家主となり、現在は戸建て賃貸2戸とアパート5棟37戸を所有する原一道オーナー(横浜市)。過去に所有物件内で入居者が死亡した際、管理会社から原オーナーへの連絡が遅れたことがあった。

 「私は悪い報告こそいち早くしてほしかった。言いにくいのだろうが、担当者のミスだと思います。私から管理会社に強く抗議しました」(原オーナー)

その3

修繕費を過大請求された

 

問題の原因も示さず 見積額の正当性も不明

 一族でアパート5棟47戸を経営する馬場知弘オーナー(東京都小金井市)は、所有する物件の管理会社から「漏水が発生した」と連絡があった。

 だが、どんなトラブルがあって漏水が起こったのかという説明はなかった。さらに、修繕の見積もりにも不透明な部分があった。

 「管理会社に『修繕費用が50万円以上かかる場合は複数の事業者に入札を行いたい』と要求したら、50万円をぎりぎり下回る見積額を伝えられました」(馬場オーナー)

 その後に同じ物件の別の部屋で漏水が発生。馬場オーナーが別の修繕事業者に依頼すると、修繕費用は30万円程度で済み、原因についての報告もあった。このことを管理会社に問い合わせるも「答える必要はない」との返答だった。こういったことが変更のきっかけの一つになった。

新しい管理会社の見つけ方

交流会や取引先の紹介で見つける

その1

勉強会の講師に直接依頼

 

物件写真の相談がきっかけ 親身な対応を信頼

 管理会社を探す場合、インターネットで検索することから始める家主が多いだろう。ここではそれとは違った髙島オーナーと馬場オーナーの例を紹介する。

 管理会社が不動産情報サイトの物件写真を更新してくれない悩みを抱えていた髙島オーナーは、関西の家主が集まる「がんばる家主の会」の勉強会に参加。そこで「賃貸経営“写真撮影”のすすめ」と題して講演していたのが物件フォトグラファーとして活動し、賃貸管理も手がけるエリーエステート(兵庫県尼崎市)の西原和成代表だった。

 髙島オーナーは「自分で撮影した物件写真を管理会社に渡すことで更新を促せないか」と西原代表に相談するうちに、管理も委託するようになった。「親身になって対応してくれるので助かります」(髙島オーナー)

紹介された管理会社なら紹介者の顔が立つようきちんと仕事をしてくれると期待

その2

顧問税理士からの紹介

 

人づては信頼ができる 関係者から紹介を受ける

 馬場オーナーは、顧問税理士からの紹介で新たな管理会社を見つけることができた。

 これまで複数回にわたって管理会社を変更。その時々の管理会社に物件の清掃管理が行き届いていないなど不信感を覚えることがあったからだ。馬場オーナーはそういった経緯を詳細に記録していた。それと同時に、顧問税理士にも、賃貸経営の状況を伝える際に、そうした悩みを共有していた。「私たちの事情に通じた顧問税理士からの紹介であれば、信頼できる管理会社なのだと思いました。その管理会社も紹介者(顧問税理士)の顔が立つよう、きちんとした仕事をするだろうという期待もありました」(馬場オーナー)

選ぶ際のこだわり

定借、客付け力、助言がポイント

その1

定期借家契約が可能か

 

入居者の獲得が有利に 物件の特性に合った契約

 井上敬仁オーナー(神奈川県二宮町)は、東海大学湘南キャンパス周辺に6棟55戸を所有し、同大学の学生に向けて貸し出している。

 全物件の管理を地場の管理会社、ユーミーClass(クラス: 神奈川県藤沢市)に委託している。定期借家契約が可能な点が理由だ。

 大学受験生たちは入学が決まる2~3月ごろに部屋を探すのが一般的だ。一方、同大学は付属高校からの推薦入学者も多く、推薦入学が決まる9~10月も部屋探しが活況になる。「この需要を取りこぼさないために、卒業に伴う退去が見込まれる部屋について、いち早く募集が可能な定期借家契約が強みを発揮します」(井上オーナー)

 普通借家契約だと、退去届が出た後でないと新規募集ができない。定期借家契約は、早ければ退去の半年程度前から新規募集をすることができる。井上オーナーはこの点を考慮して、定期借家契約が可能かどうかを管理会社選定の物差しにした。

 所有物件の多くで管理をSHiTEN(シテン: 東京都品川区)に委託している馬場オーナーも、同社を選んだ理由に定期借家契約が可能な点を挙げた。騒音やごみの未分別問題などを起こす入居者に対して、繰り返し注意しても改善が見られない場合に退去を通知する際、定期借家契約だと結果的に有利になる。

定期借家契約が結べるメリットは大きい

その2

客付けの強さ

 

マンパワーの強さに期待 客付けの期間で判断

 もちろん、管理会社の客付けの強さにこだわる意見もある。

 自主管理以外の物件は大手管理会社に管理を任せている原オーナーは、周辺エリアで最高値の賃料でいかに柔軟性のある客付けができるかを重要視するという。「理想は退去日までに次の申し込みがあること。内見が必要な場合は退去から1カ月以内に申し込みがあるかどうかを目安にしています」と語る。

 井上オーナーは、定期借家契約が可能な点と共に客付け力があったことも現在の管理会社を選んだ理由だ。東海大学湘南キャンパス周辺にグループ会社の仲介店舗が2店舗あり、井上オーナーは「繁忙期に投入する営業担当の人員が他社に比べて圧倒的に多いです」と言う。

その3

経営のアドバイス

 

一緒に戦略を練る助言ができる会社

 「私はまだまだ家主業を勉強中の身です」と自身を評価する髙島オーナーは、管理会社から賃貸経営上の助言をもらうことを期待している。以前の管理会社に対しては、退去後のリフォームの際にターゲットの絞り込みを含めた戦略について相談を持ちかけたが、具体的なアドバイスや提案がもらえなかった。現在管理を任せている管理会社は「リフォームについてもターゲットに合わせた提案をしてくれるので助かっています」(髙島オーナー)

 

お互いの歩み寄りが大切

良好なコミュニケーションの取り方

 一方的に家主から要望を伝えるだけではいい関係はつくれない。各家主の工夫を見てみよう。

「さん付け」で呼び合う 気軽に話せる雰囲気をつくる

 「家主が上の立場とは思っていません。あくまでも同じ立場のパートナーだと考えています」と話す井上オーナーは、管理会社の担当者と互いに「さん付け」で呼び合っている。

 担当者との間は風通しが良く、週に1度程度メールで連絡を取り合い、物件の共用部の状態を共有し合う。それに加えて月に1度は必ず会って、最近の学生のニーズについて情報交換をしている。

 手土産や食事会などにも工夫をする。「ホワイトデーには奮発して管理会社および仲介会社の女性社員全員に高級チョコレートを贈ったり、繁忙期後に担当者の方々を招いて食事会を開いています」(井上オーナー)

何でもフラットに話すため 厳しい意見にも耳を傾ける

 髙島オーナーは、現在の管理会社を信頼し、数々の相談や提案をしている。

 例えばリフォームについて、方針がおおかた決まったところで新たな案が浮かぶと相談してみることもある。すると管理会社から「現段階での変更は工務店や職人の負担になる可能性がある」と状況を考慮したうえでの意見が返って来る。髙島オーナーはそういった指摘を「ありがたいもの」だと感謝し、受け入れている。

ギブ・アンド・テイクを大事に 管理会社にも人を紹介する

 原オーナーは「管理会社とオーナーは互恵性の関係だと意識しています」と語る。管理会社との長い付き合いの中で、交渉の結果、管理費を下げてくれることもある。原オーナーにとってそれはいわば「テイク」。であれば、そのテイクを補って余りある「ギブ」を実行するという。

 「私は自分を『カタリスト(触媒人間)』と称し、人と人をつなげることが得意です。そこで、管理会社の担当者にも、付き合いのある別の家主を紹介するなどして人脈形成のお手伝いをしたり、貴重な情報を提供したりします。私たちオーナーも彼ら(管理会社や担当者)を選びますが、彼らも私たちオーナーを選ぶはず。たとえ、所有戸数が少なくとも選ばれるオーナーになるためには、私でもできるギブは何なのかを常に考えています」(原オーナー)

管理会社といい関係をつくるための極意
オーナーも管理会社や担当者を選ぶが
彼らもオーナーを選んでいる
ということを肝に銘じる

(2026年1月号掲載)

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