高齢入居者につながりと安心を提供

賃貸経営入居者との関係づくり

<<入居者との思い出>>

父から引き継いだ築古物件に住む 
高齢者につながりと安心を提供

  大学教員だった神吉優美オーナーは、家主業をしていた父が老人ホームに入居したのを機に、事業を引き継いだ。それ以降、母と兄、姉と共に物件の自主管理をしている。2024年3月に大学を退職し、今は専業家主だ。所有物件327戸はすべて築古で、最も新しいものでも築56年になる。

 入居者も高齢化が進んだ。150戸に高齢者が暮らしており、そのうち8割が単身だという。また基本的には高齢者の入居を断らないため、新規入居者の大半は70歳以上だ。

神吉優美オーナー(大阪府豊中市)

 父からは、子どもの頃から「神吉家は、家賃でご飯を食べられているのだから、決して入居者を追い出すようなことはしないように」と言われていたという神吉オーナー。家主業の引継ぎは、物件の共用部を掃除しながら「大家の娘です」と入居者にあいさつをすることから始めた。 

 その後も父との約束を守るべく、日頃から入居者とのコミュニケーションを大切にしてきた。よく話すようになった人や自主的に共用部を掃除してくれていた人に、お礼の気持ちも込めて当時小学生だった息子から「母の日」のカーネーションを渡したこともあったという。 

 「子どものいない入居者から『生まれて初めて母の日に花をもらった』と涙を流して喜ばれ、私も感激したことを覚えています」と話す神吉オーナー。

 所有物件の一つ、「浜神吉マンション」では20年に空室をコミュニティールームにリノベーションした。そこを活用し、入居者の誕生日会やみそ造りのワークショップなどを開催。また自身が主催するイベントにも高齢入居者を招待し、さまざまな世代が交流する場を提供している。「最初は遠慮がちな高齢者が、子どもたちに声をかけられると次第に笑顔になっていくのを見られるのがとてもうれしい」と神吉オーナーは話す。

▲イベントの一つ、花火大会は高齢入居者と地域の子どもたちとの触れ合いの場だ

 こうして緩やかな関わりを持つことで、入居者の様子を把握できる。以前には、入居者が経済的に困窮していることを知り、行政につないで生活保護申請の手助けをしたこともあった。

 「住まいは暮らしの器であり、人生を支える基盤です。家主の仕事はその基盤を守り、安心して暮らせる環境を維持すること。人々の生活を支える社会的な使命を担っています。責任は重く、決して楽な仕事ではありませんが、多くの人の人生に関わる家主業に、大きなやりがいを感じています」(神吉オーナー)

[神吉優美オーナー プロフィール]
大阪府豊中市出身。2018年に父から家主業を引き継ぎ327戸を家族で自主管理中。当初は空室率の多い築古借家にがくぜんとしたが、入居者とコミュニケーションを取りながら賃貸事業の立て直しを図ってきた。築古借家の活用で社会課題を解決すべく奮闘中。

(2026年4月号掲載)

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