現金購入ではじめた築古戸建て60棟

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現金購入で始めた築古戸建て60棟
高利回りを実現した1万円物件

 遠藤健オーナー(新潟県長岡市)は、新潟県で築古戸建てを中心に賃貸経営を行ってきた。現在戸建てを約60棟運営。ほかに所有するアパートも合わせると、家賃収入は月に200万円を超え、年間約2500万円に上る。遠藤オーナーの投資の面白さは「激安」物件を扱っている点だ。100万円以下の物件は当然のこと、1万円で購入した物件も複数あるという。こうして保有する戸建てをスピーディーに増やしてきた。

遠藤健オーナー(新潟県長岡市)

母親から借りた1200万円

 元々保育士だった遠藤オーナー。当時は年収300万円に届かず、漠然と持っていた将来への不安もあり、2010年、26歳の時に不動産投資に興味を持った。そして、書籍などで勉強する中で、激安築古戸建てを対象とした投資方針が自分に向いていると感じたという。そこで貯金の200万円ほどを元手に、不動産投資を行う決意をした。

 しかし、いざ物件購入を検討し始めると、いくら築古の戸建てでも200万円の元手ではさすがに購入することは難しかった。そんなとき、遠藤オーナーを支えたのは母親だった。

 「不動産投資について家族に話したら、父親と兄からはお前にできるわけがないと厳しく言われてしまって。でも母親だけは味方で、本気ならやってみなさいと背中を押してくれました」(遠藤オーナー)

 この時、母親が貸してくれた金額は1200万円。

 「本当にありがたかったです。母親にいつか恩返しをしたいという思いが、賃貸経営をがんばる原動力になりました。また父親と兄を見返してやるという意地もありましたね」と遠藤オーナーは語る。

最初の2棟は現金購入

 資金が用意できた遠藤オーナーは、不動産投資の勉強や物件検討期間を経て、13年4月に1棟目の戸建てを現金で購入。長岡市近郊で価格は398万円、賃料は5万円で利回りは約13%を得た。同年8月には新潟県柏崎市にオーナーチェンジ戸建てを360万円で現金購入した。賃料4万8000円のため利回りは約16%だった。リスクを抑えて始めるため、最初は小さい物件を現金で購入していった。

▲398万円で購入した念願の1棟目。利回りは約13%だった

 この戸建て2棟で家主業について理解が深まったことや、拡大スピードを上げたいという思いがあり、同年12月にも3棟目を購入。長岡市内にある築30年超の軽量鉄骨造アパートで2DK3戸。価格は750万円で利回りは約19%だった。ここまでの2棟と同じく現金で購入し取得した。

 当初用意していた現金はここで尽きた遠藤オーナー。しかし、これまで購入した物件の家賃を貯めていたことが銀行に評価され、15年2月には1400万円の物件をフルローンで購入することができた。長岡市内の築20年超えの木造アパートで2DKが4戸。月の家賃収入が合計20万円、利回りは17%ほどだった。

空き家バンク活用で高利回り実現

 遠藤オーナーが投資の面白さを感じている「激安」物件投資はここから始まっていく。

 「16年5月には、空き家バンクで見つけた長岡市内の築古物件を20万円で買いました。買い付けは多く入っており、私は4番手でした。しかしほかの人は遠方からの購入希望者でした。雪が多いエリアでもあることから、実際に管理するときのことを考えると面倒になり辞退する人が多く、結果として近所に住む私が購入できました」(遠藤オーナー)

 この物件は手をかけることなく3万円で貸せているため、利回りはなんと180%。また同年6月には固定資産税評価額600万円の物件を200万円で購入できたという。告知事項があったことが実際の価格を下げた要因だ。そして17年にはフルローンで2500万円のアパートを購入した。3DKが3戸とテナント3戸の物件で、今では月に賃料30万円を稼ぎ、利回りは約14・4%になった。

 この頃には賃料収入が合計で月70万円に到達。返済後の手残りも40万円以上あり、不動産投資が軌道に乗ったと感じたという。同じ17年には、さらに戸建て4棟とアパート1棟を購入。この時購入した戸建ての金額は、安くて10万円、高くても250万円だった。そして18年、34歳になる年に専業大家となった。

貸し出し方の選択肢を多く持つ

 「最初の頃はインターネットで情報収集していましたが、不動産会社からも良い情報がもらえるようになってきました。空き家バンクで購入するような激安物件や、告知事項あり物件も問題なく運用できている実績から、不動産会社が『この難しい物件は一旦遠藤に紹介してみよう』というポジションになれたようです。解体費用をかけて処分を検討しているような物件を紹介してもらうこともありました。そういった物件を1万円で購入することが複数回ありましたね。解体費をかけて処分する必要がなくなったと売主さんからも感謝してもらえました。同じようにほぼ手出しなしで物件を購入することが多く、今では戸建ては約60棟まで拡大しています」(遠藤オーナー)

 一方で激安で購入できる物件は、客付けが難しいエリアが多い。そういった場所でも遠藤オーナーは積極的に取り組む。

 「どんな場所でも、賃料を安く設定すれば貸し出せることが多いです。ただ、安く貸すためには、リフォーム費用などを加味して購入価格を抑える必要があります。購入前にはそのコストを想定するように内見します。また物件に手を加えずに、倉庫やガレージなど非住居として貸し出すことも多いです。貸し出し方の選択肢を多く持つことも大事ですね」(遠藤オーナー)

 今後は出口戦略についても意識していくという。激安物件は、立地などの問題で売りづらいことが多く、すぐに買い手がつくとは限らない。そのため、長い目で見て少しずつ売却もしながら運営を進めていくという。激安物件は、敬遠される理由があるが故の価格だ。しかし、遠藤オーナーはそのリスクを適切に見極め、市場に物件を供給していく。

※取得金額のマイナス表記について…建物価格とは別で、売主から解体などにかかる費用として料金を徴収。合算すると持ち出しなしで資金を得る形になったことを意味する

(2025年9月号掲載)

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