<<Focus 〜 この人に聞く〜>>
100年住める高気密・高断熱の物件
目指すは電気消費をセーブした脱炭素社会
「高気密・高断熱住宅」がまだ住宅のプロの間でもほとんど知られていなかった1990 年代に、早くもエネルギー消費の少ない住宅の重要性に気づいたのがWELLNEST HOME(ウェルネストホーム)の早田宏徳氏だ。長らく高断熱仕様の戸建て住宅を手掛けてきたが、2023年に満を持して賃貸物件WELLNEST ROOMをリリースした。
ウェルネストホーム(名古屋市)
代表取締役創業者 早田宏徳氏

――賃貸の集合住宅でハイスペックの高気密・高断熱型は日本では珍しいです。
この30年の間、ずっと省エネ型の集合住宅を建てたいと思っていました。というのも、エネルギー効率のいい建物を考えると集合住宅のほうが向いているからです。高気密・高断熱仕様にするためには、通常より断熱材を多く使う必要があります。しかし集合住宅であれば各住戸が壁や床・天井を共有しているため、断熱材の量を抑えることが可能です。結果として部材コストを抑えつつ建物全体として高断熱を実現しやすいのです。
――とはいえ、省エネ物件と聞くと建築費が高そうなイメージで賃貸住宅のオーナーには敬遠されがちです。
おっしゃるとおり、オーナーの理解が必要です。そこでまずは実需の戸建てで実績を積み上げて、高気密・高断熱の省エネ住宅の良さを広める必要がありました。
――そもそも日本における省エネ住宅の先駆者になろうとしたきっかけは。
1997年に採択された京都議定書です。このまま化石燃料を使い続けていては、地球の温暖化は進む一方です。それならば、高気密・高断熱の家を造ろうと思いました。そうした住宅を造れば、冷暖房に使用される電気の消費がセーブできます。つまり、脱炭素社会への一歩になるということ。目指すのは、ドイツの環境配慮型の街・ヴォーバン住宅地区です。
――ドイツはこの分野で先進国です。
2007年に初めて訪れて以来、毎年のように見学に行っています。当時、ヴォーバンに、家族 人暮らしで年間の暖房代が 2万5000円という集合住宅がありました。その時、私が日本で手掛けていた戸建ては年間の冷暖房費が 12万円。これでは到底かなわないと思ったのを覚えています。
――今後、どのように日本版ヴォーバンを実現させていきますか?
今後は、AIを活用しての展開も考えています。目下、AI関連のスタートアップ企業 社と協業を始めました。AI技術を使うことで、一気に当社が手がける省エネ住宅の情報を拡散できると考えます。光熱費を抑え、一年中室温が一定に保たれている快適な物件に住める人が増える。オーナーも入居者リテンションに強く価値の落ちない資産を手に入れることができる。しかもそれが結果として、エネルギー削減につながり脱炭素社会の実現に近づく。この三方よしを実現させていきたいですね。
(長谷川律佳)
2008年にドイツの高性能住宅に衝撃を受け、2012年にウェルネストホームの前身となる低燃費住宅を創業。現在はウェルネストR&D代表も兼任し、再エネ最適化や高性能集合住宅による持続可能なまちづくりにも取り組む。
(2026年1月号掲載)






